獣になれない私たち/〜最終話

脚本:野木亜紀子 演出:水田伸生
終わってみて一番感情移入したというか、世間の評価に対して「それは違うよ」と言いたくなったのは、意外にも九十九社長(山内圭哉)だったw。
番組終盤までほとんど人間のクズのような描かれ方をしていた朱里(黒木華)だけど、そもそも京谷(田中圭)が好きになった子なんだから、晶(新垣結衣)的に気配りのできる頑張り屋だったはずなんだよね。そういうとこで、たぶん社長は真面目に朱里に期待してたしできると思って使ってたんだと思うんだ。あの人の場合、ナチュラルに他人にスペックの高さを求め過ぎるのはあるんだけど、できる範囲で頑張っていれば、いきなり満点の仕事はできなくても、それはそれだったと思うんだよね。
晶のこと「この子人の気持ちがわかんない子だなー」と思ったのは例の恒星(松田龍平)との一夜の後で恒星の言い訳にまともに怒ってたことで、ああいう行為の価値とか意味は人それぞれで違うから、恒星は自分にとってのそれと晶にとってのそれを一緒にしちゃまずいと思ってああ言ってたんだと思うのに、それをまったく理解しなかったことだよね。でも実際のところあの行為の意味はふたりとも同じで、恒星は自分なんかと晶を一緒にしちゃだめだと思ったんだと思うのに。
同じように九十九さんはたしかにパワハラ上司だけど、上司が部下に期待するのは当たり前じゃん。九十九さんはそれを表すのがちょー下手だったけど、「私が悪うございました」と折れるわけにはそらーいかんよ。呉羽が呉羽にしかなれないのは良くて、九十九さんが九十九さんなのはなんでいかんのさ。謝るわけにいかないから、信頼してた優秀な部下を失う。ペナルティとしては充分だし、あのわけのわからん肩書きは、転職活動する晶にはなかなかのプレゼントだと思うぜ。
晶や恒星は私にはすごい分かりやすいキャラだった。分かるから好きになるわけじゃないし、分かるからこそイライラするとこもあるけど、幸せになって欲しい程度の思い入れはある。そしてこのふたりの関係において、恒星が晶を嫌いだと最初に言っていたこと、晶が嫌われないための気配りを恒星にはしなくて良かったことは、確実に晶を楽にしてたと思うんだ。