繋がれた明日#3/足立が殴った理由

なんか足立の扱いに不満の声が多いなあ。
松田さんの出番はNHKみかじめ料問題で減ったんじゃないかという噂があって、事実の可能性は高い気がするけどあれで十分だと思う。自分が殺した相手の母親に、一人の人間の人生を台無しにしてやろうというほどの憎悪を向けられ、保護司のはなしを聞いても気持ちの整理はつけられないまま自分と同類である少刑仲間を訪ねるけど、そこで気分で殴られる仲間の姿を見て自分にとっての希望の形を確認する、というのはとても良いシーンだった。私は足立が出ていったシーンの青木くんの明るい笑い声で、一気に中道も青木くんも好きになったよ。
むしろこのキチキチに時間の足りないドラマに、削られたシーンの入る余地はあったのかと素で疑問に感じたくらいなんだけど。
愚痴ってる人の意見によると原作ではもう少し足立のキャラに肉付けがあるみたいだけど、そんなもの描く暇があるなら中道の描写に尺を割いて欲しい。真っ当に生きようとするなら罪を犯した過去はずっとついて回るし、ヤクザになればそんな過去とは切り離されて生きることもできるという考えを示すキャラならコウスケがいて、「そんな生き方には興味がない」と中道が悟ったんだから十分だと思うんだ。
「ヤクザになんかならずに真っ当に生きろ」というのは私たちカタギの(w)視聴者が考えることで、作品中でヤクザである足立の考えることじゃない。足立の行動が自分達への思いやりの匂いでも感じさせたら、後のシーンの中道の笑い声があれだけ明るいものであることが、他のシーンで時々感じられたような「他人の気持ちへの無神経さや若造的甘え」に見えてしまう。せめて1クールのドラマなら、そういうのもありだと思うけど。
松田さんって最近の役者に珍しく分をわきまえた演技ができる人だと思っていて、私はそこがお気に入りポイントでもある。「もう少し違うなにか」は、できなかったんじゃなくやらずに作品中の分をわきまえたんだと思うんだけどな。
某所で「VERSUS」的な狂気でも、って意見を見たけどヤクザが自分の事務所に出入りしてるチンピラ殴るなんて、うちらがクッション殴る程度の日常ですよ。この作品に必要な演出じゃない。
憂さ晴らしに殴られる程度の、「人間」ですらない状態のみじめさ。その先に、自分が殴る立場に回れる人生があったとしても自分はそんなもの要らない。
そういうシーンだったと思うんだけどね。
あ。人間としての足立が中道を殴ったのは、中道が足立を「ヤクザを見る目」で見たからだと思うよ。ヤクザを承知で居場所がないからって自分とこに入ってくる若いのに、「ヤクザだから」って色眼鏡で見られる筋合いはないわなw。