小さき勇者たち〜ガメラ〜

実に「小さき勇者たち」のタイトルどおりの内容でした。
前評判で想像していたよりずっと良かったです。
つーか公開前から文句ばっか言ってた連中。反省しろよ。
以下ネタバレにつき、平気な方のみご覧ください。
ついでに映画館で一度見ただけ、手もとには公式本もパンフもありませんので勘違いや記憶違いはご容赦を。
帰ってからこれ注文したけどなー。

「小さき勇者たち~ガメラ~」超全集 (てれびくんデラックス愛蔵版)

「小さき勇者たち~ガメラ~」超全集 (てれびくんデラックス愛蔵版)

ファーストシーンは33年前。ギャオスと戦って自爆したガメラに「ガメラは自爆して俺たちを守ってくれたんだ」と歓声を上げる人間たちとそれを見つめる少年時代の透パパ(これが津田寛治さんの子供時代の写真使ってデジタル出演ですか、と思うくらい雰囲気似てる)。
この時点でうるうる来てしまい、以降エンディングまで涙腺はゆるみっぱなし。

ストーリーとは別に、単純に感心したのは特撮の出来の良さ。
金子功というと「え。ピンクハウスのデザイナー?」(間違いなく別人でしょうが)というくらいに馴染みのない名前でしたが終始白昼の晴れ渡った空の下、街を廃墟に変えて戦う怪獣の戦闘シーンは圧巻で、身を乗り出して見る→びっくりシーンでぎょっとして身を引く→また身を乗り出して見るの繰り返し。
画面にプラモデルが置いてあるような違和感って制作費何百億とか言ってるハリウッド映画でもあるものだったんですが、この映画に関しては感じませんでした。
その中である意味おもちゃじみた造形のトトに関してはあまり良い評価を見ないのですが、私に関してはあの造形だったからこそ感動したといえます。

この映画の予告編でも聞けた「トトはまだ子供なのに戦っている」。
これに近い台詞は他にも何度も出ます。
そもそも最初にトトがジーダスと戦うシーン。ジーダスにしがみつくトトはドラマでよく見る、誰かを守ろうと大人に飛びかかってしがみつく子供そのものでした。
その“まだ子供”な感じを示すには、あのぬいぐるみみたいな造形が有効だったと思うのです。

この映画で戦った子供はトトだけではありません。
透も透の友達も麻衣も、トトの石を持って走った子供たちもみんな戦ったのです。
私がこの映画を見にいくことにしたのは予告編の「トトはみんなが逃げるために戦っているんだ」という台詞がきっかけでしたが、この感動的な台詞を聞いても透は逃げません。

ストーリーは単純で大人ならいくらでも矛盾を指摘できるようなものです。
そもそも透が麻衣に石を渡さなければ良かっただけのはなしだし、子供が邪魔をしたくらいで政府が怪獣の確保をあきらめるとも思えないし。
けれどこのはなしはこの映画に出てくる年頃の子供たちが、自分達と同じような子供が戦う姿に感情移入するはなしだと思うのです。

まあ私もまどろっこしくグダグダ言ってないで、「やられても立ち向かっていくんだよ。燃えるじゃーん」って言えば良いだけのはなしなんですが(笑。

ややはなしはそれますが、ずっとライダー派だった自分がメビウスの方が面白く感じることに疑問を感じていました。
カブトを見るみたいに画面の前に正座してすみずみまでチェックし、こと細かな感想を上げようとはまったく思いませんが、何度もDVDを見直していちいち飽きずに画面にエールを送ってしまう気持ち。
この映画で感じたものはそれに似ていたと思います。言葉にすると大げさだし、いい年してそんなこと思うの?、ってはなしではありますが(w)それは子供の頃ヒーローものを見て感じていた“自分達を守ってくれる仲間への敬意”と“弱さへの共感”。
書いたことがあるかも知れませんが、私はウルトラマン*1のカラータイマーが鳴りはじめると、ごはんの途中でもテレビの前から逃げる子でした。

「可哀想だは惚れたってことよ」という言葉があります。
やられているウルトラマンが可哀想で見ていられない、という気持ちは本来守ってくれるはずのヒーローを同じレベルで心配する、実に不遜な態度だったのかも知れません。
でも私は安心して見ていられないおぼつかない戦い方でも、頑張って戦ってくれたトトも子供たちも、いじらしい。応援したい、と思いました。
メビウスに感じているのも同じ気持ちだと思います。

ヒーローは強くて当たり前、どんな敵でも倒せなければへたれ扱いされるようになったのはいつからでしょう?
力弱いものが力を合わせて巨大な敵に立ち向かう。そっちの方が“感動的”だと思う感性がそうレアなものとも思えないのに。
透の父は映画の中で何度も「あれはもうトトじゃない。ガメラなんだ」と言います。けれどトトは子供のトトのまま、透たち友達のために命がけで戦います。巨大な体を手に入れても、心が違うものになるわけではありません。
私を感動させたのはトトを含む子供たちの弱さだと思うし、この映画でトトの造形が“ガメラ(=怪獣)”であることより“トト(=子供)”であることを優先されたのも良かったと思います。

私は好きな映画でした。

*1:私のいうウルトラマンおよび仮面ライダーは、シリーズのいずれかです。みんな一緒にしてすいませんw