伸ちゃんのオーダー

ブログやってると評価の空気が分かるなあと感じるのは、自分ちはもともとその評価に引っかかる感想を書いてるからなんだから公平じゃないとは思うけど、最近ちょっと笑うのは「米村脚本 批判」とかで飛んでくる人が多いことね。で、どういう流れでそんな言葉使ったんだっけと逆に解析たどってたどったついでに人んちも見にいったりしてさ。
ただまあ去年1年米ちゃんの脚本のなにが気に入らないのかとずっと考えてた人間としては、今度の評価は濡れ衣も多い気がするよ?
そもそも1クールもやってない番組の脚本を書くのにゲストライターの米ちゃんが完全な自由裁量で書けるわけないと思うし、そう考えれば今回のオーダーは、「キンタロスの暴走で時の運行が変わってしまうはなし」だったんだと思うから、「勝手にタイムパラドックスネタなんか書いて。空気読め」ってそんな、時間ものの番組でタイムパラドックスは根幹に関わる問題なんだから、勝手に書いたんならNG出すだろうし、米ちゃんだってそんなNG食らう可能性のあるはなし書くほど暇じゃないだろ。今回のオーナーの態度なんて、ある意味今後の態度を決定したようなもんじゃん。そう思ったら今度のはなしで意外性の高かったタイムパラドックスの扱いやオーナーの態度は、最初からそういうオーダーだったと考えるのが自然。
その作品が登場編で視聴者の涙を搾ったキンタをダジャレ暴走親爺に貶めるはなしになった時点で叩かれるには十分なんだから、そんな自分のせいかどうかも分かんないことで叩かなくってもねえ(笑。
ただまあ登場編からキンタのキャラは自信過剰ぎみで思い込みが激しいってのはあったから、米ちゃんのとらえ方も的外れではないんだけどね。登場編は本条の事情や菊池のキャラを絡めてやや酸っぱいにおいを漂わせつつも、他人のために突っ走れるキンタのキャラの良い面を書いてたけど(そりゃ良いとこ書かなきゃ良太郎が入居を認める流れに持っていけないもんね。基本的にキンタは他のイマジンよりちょっと契約者に誠実だったってだけで、山越のために金を集めたイマジンだって山越の望みを叶えたことには変わらないんだから、良太郎の態度はやや公平性には欠けると思うよ)、そもそも「俺の強さにおまえが泣いた」というキンタの決め台詞のなにげな感じ悪さといい、キンタは靖子にゃんにとっても扱いやすいキャラじゃない気がするのはうがち過ぎでしょうか。現状パワーファイターで強さは圧倒的だから、そういう使い勝手は良さそうだけど。「涙はこれで拭いとけ」という台詞も、今週のラストで良太郎が使った時は優しい言葉に聞こえたけど、キンタの使い方って勝利宣言だから感じ悪いっちゃあ感じ悪いよな。

登場編で本条のために自分が消えても仕方ないというキンタの態度も、潔いという感想が圧倒的に多かったし私もそうは思ったけど、同時に感じたのは自分が消えることへの認識の甘さで、それって山越編でモモと戦うことを拒んだ良太郎に感じたもんでもあったんだよ。あの時モモが謝らなければ良太郎はイマジンに殺されちゃったんだろうし*1、殺されるの怖さにモモに助けを求めたりしたらかなりはなしは台無しだけど、生きるか死ぬかの瀬戸際でそんな意地張ってる場合かというのは、モモにすら分かる大人の理屈だ(笑。
ただ山越編の良太郎にしても登場編のキンタにしても、その覚悟(良太郎に関しては、自分が他人を傷つけるなら死んだ方が良いって覚悟のことで、死んでもモモと戦うのはやだってことじゃないよw)自体は美しいと思うし、電王の物語というのは、そういう美しい意志は他人の好意で購われる(今回キンタの暴走がオーナーのお目こぼしにあったのもそのひとつ)という流れで成り立っていて、それは過去の白倉ライダーが、ライダーの戦いのささやかな穴を意地悪く追いつめることではなしを作っていたことを思うとすごい変化だと私は思うのさ。
その他いろいろ、電王は過去の伸ちゃん作品の欠点をかなり意識的に改善して作ってると私は思ってて、それは龍騎セーラームーンタイムレンジャー(まだ途中までしか見てないけど)の小林脚本を、「できは良いんだろうけどキャラは嫌い」と感じた私の電王脚本への印象でもあるんだ。電王の脚本って、私が「あー。靖子にゃんのこういうとこキライ」と感じたような要素を意識的に排除して書いてあると思うもん。伸ちゃんだけでも靖子にゃんだけでも、こうはいかないと思うんだよね。

ただまあ「良いんじゃないの。ライダーには違いないしいつもの感じで」みたいなツメの甘さは時々感じて、筆頭はハナの扱いの杜撰さね。今回批判の多いハナが父親を非難したことは、良太郎とハナで動いてたから、父親を非難する役をハナにふるのは米ちゃんの仕事なら想定内だし、そういう意味で伸ちゃんはヒロインの役割は相変わらず重視しないんだなとは思うけどさ。
ハナのキャラの説明がないのは過去作の傾向からいって、靖子にゃんはハナの存在自体を最終的な謎に関わるものとして持ってくる気でいるんだろうと私は思っているから気にならないです。戦いはじめると役に立たないって点も、その“役に立たない”ことこそがハナ自身の問題として浮上するドラマもあるだろうと思うし、長石組だったキンタ登場編で自ら良太郎を救うシーンで、良太郎の腑甲斐無さを責めるでもなく「良太郎を守るのが私の役目」と笑うシーンとか、イマジンへの憎しみを感じつつ、それでも自分の思う“イマジン”と同じではないキンタの消滅を受け入れられずにパニクるシーンとか、今までの靖子にゃんのキャラには見られない深い描き方だと思う。
正直ハナのキャラは、百合子さんがそういうハナの複雑な感情を自分で筋道立てて演じられるほど賢い人なら今の脚本でもずっと魅力的になると思うよ。期待するだけ無駄だろうけど。

私は謎部分にはまるで期待できないだろうなという点も含めて電王はすごい気に入ってるんで、この後どんなgdgd展開が待っていようと良太郎の描写さえ納得できりゃ気にならないです。そういう意味じゃかなりのフリーハンドを与えられてしまいそうな敏樹さんの登板の方が怖いw。
まあキンタ登場編からゲスト回で次回もうリュウタロス登場というのは慌ただしいかなとは思うけど、タロズの描写がデンライナー内の漫才中心なせいで、タロズと良太郎の関係性の描写が物足りない方が気になるかなあ。
ところでリュウタロスの元ネタ竜の子タロスがかなり異端者の自己犠牲のはなしだとか、竜太郎はリョウタロウと読めるとかが気になるのは気にし過ぎですよね。

*1:特異点は不死ではないとオーナーは言ってたし