雨柳堂夢咄(其の十二)

雨柳堂夢咄 其ノ十二 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

雨柳堂夢咄 其ノ十二 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

出るというのは聞いていたけど出たというのは意識してなくて、今日本屋行ったついでに「そういえば出てるのかな」と思い出して購入。
読み切り短編の連作シリーズで元々刊行ペースは早くないんですが、前の単行本から2年ぶりだそうですw。
自分としては一番好きな漫画家さんなんだけどそれは作風が好きだからで、私は運命と戦わない人のはなしが好きなんですよ。
最近某さんとシラクラライダー絡みのはなしをしていて気がついたんだけど、私運命と戦うはなしあまり好きじゃないのね。そういうはなしはそういうはなしで好きなんだけど、「ツボ直撃ーーー」っていうのは運命と戦わないはなし。555の巧でも良太郎でも、理不尽な運命でも受け入れる、それを受け入れる前になにをするか、っていうはなしが好き。自分自身に課せられた運命の理不尽さは理不尽さとして、それを受け入れる時にどれだけ毅然として自分のなすべきことを果たせるかっていうね。
波津さんは扱う時代が大正から昭和初期くらいの人間がまだまだ自分の好きなようには生きられなかった時代が多くて、中でも雨柳堂のシリーズは骨董品に残された思いのはなしだから特にそういう“運命を受け入れた人のはなし”が多くて、はなしとしては地味で盛り上がりに欠けるんだけど、けして幸福とはいえない人生を送った人が、骨董を通して心残りを届けたり受け取ったり、という距離感がすごい好きなシリーズでしたねー。
一応この本でシリーズはお休みということで、最終回という形のないことを非難する声もあるみたいですが元々明かさなければならない謎のあるはなしでもないし、お休みならお休みで良いじゃないかって感じですがねー。“最終回”で蓮やおじいちゃんにオチがついちゃったりしたらそっちのがヤだ。
以前放送したNHKBSの番組で、黙々とカケアミしていた波津さんに笑いましたが、元々漫画家としては人物が弱点だったとはいえ、体力的には下り坂であろうお年になっても絵が荒れた印象もないし、今後も良いものを描いてもらえたらうれしいなあ、と思います。