ミヤ子(原田夏希)みたいな女って、殺されかけて「別れないならほんとに殺す」って言われても別れないでつきまとうもんなんだろうか。井野(谷原章介)はミヤ子を殺すより、子供ができてもほっぽって逃げてしまえば良かったのに。
……なんてことを言ってはいかんのかも知れんけど、個人的にミヤ子みたいな女は大嫌いなので、思わず井野に同情してしまった。だってミヤ子が井野にとって連れ添いたいと思うような女なら、そもそもこんなことにはならなかったんじゃないか? 井野がミヤ子を好きだったか否かはともかく、ミヤ子を好きでいたかったのは事実なんだろうから。
松本清張ドラマだけに人物像のつっこみどころは満載だけど、1時間程度のドラマにするために切り捨てた、井野の戦争体験から来る進駐軍への感情とか、そこからくるミヤ子への感情の屈折とか匂わせる程度の残し方とか、それをちゃんと演じる谷原さんのうまさもあって、見応えや奥行きのあるドラマだったな。破滅を怖れてるのに俳優を辞めない井野の動機を、シーンにしないでファーストシーンのニーナの台詞で暗喩する見せ方も気が利いてた。中園健司の脚本って、なんかこのまどろっこしい距離感が好きだ。
谷原さんって「新選組!」までは存在も知らない感じだったけど、自分の中で十指に入るくらいの上手い人だ。演技の質としては最近ベタほめしてる向井りーに似た認識なんだけど、この人向井りーと違って邪魔になるくらい顔が良いからなー。だからこそできる役もあるんだけど。
ちょっと面白かった。