明智光秀〜神に愛されなかった男〜

フジテレビ苦手だし、視聴モチは長澤ちゃんくらいだし、そんな期待してなかったんだけど切り口がツボったので意外と楽しく見れた。……が、気になるところも同じくらいあったもので、なにが気になるんだろうと4回も見直してしまったよ。タイトルは「神に愛されなかった男」だけど、どっちかというと「神の愛に報いなかった男」だよね。
脚本がずっと秀吉を並行して描いているのは良かったけど、ファーストシーンがいただけなかった。義昭と信長に万一のことがあってはいけないから、埃まみれになって市中を見回ってたって、それ「こんなに仕事してました」ってアピールじゃん。見回り完了したんだったら言わなくって良いじゃん。
500年にわたって「空気読まない男」と評価され続けてきた光秀とはいえ主役なんだからさあ。信長の歓心を買おうとしてはおいしいところを持っていかれるコンプレックスもあって秀吉を嫌う、という気持ちの流れは分かるんだけど、それじゃあラストが腑に落ちないし、ちょっと功名心満々なのがひく。城を持って家族と暮らせるように、とか、自分は天下など望んでないし、みたいなことをどこかで言葉にしとけば良いのにと思う。
「頑張ってるのに能力を評価されない」みたいな現代と通じる切り口を目指したのはありありと分かるんだけど、演出家が時代劇初のせいかあまりにテンションがライト。
特に信長みたいなのを主君に持った場合、その不興を買うことは一気に死に直結しかねないし、秀吉との仲にしても、同僚との不仲(というか、子供絡みではっきり光秀が秀吉を貶めているのがバレてる以上、恨みを買って戦で見殺しにされる可能性だって普通にあり得る世界なんだから)が生き死にに関わる世界なんだから、光秀の空気読まなさに周りの方がヒヤヒヤするとか、そういうのは演出ででも見せられなかったかなあ。ほんとは他の武将の陰口とかでシーンとして入れておいたほうがいいと思うけど、子供がさるさる言ってて「“お”をつけるな」のシーンとかも、ひろ子もそんなにあせらないし成り上がりと侮ってるように見える(実際そういうのもあるんだろうけど)けど、自分はなんぼのものなのよ、と見えちゃうし、義昭に意見する場面とかも、将軍ってのは僧兵皆殺しをためらわなかった信長が殺さなかったくらいの存在なんだからさ。あまりに対等にしゃべり過ぎでしょう。その辺は時間的にストレートな描写にならざるを得なかったのかも知れないけど。
娘ふたりは懐いている様子を見せて、光秀のモチがこの妻子の幸せなのを描こうとしたのは分かるけど、あんましガチャガチャ騒がせ過ぎ。言ってる内容が意味を持つシーンでも、「なんか騒いでる」くらいで流しちゃうのはまずいよ。
長澤ちゃんは若すぎるって意見が多いけど気にならなかったな。セーラー服でも思ったけど、一種の聖母キャラっていうか“存在自体が救い”みたいな役は柄に合ってると思う。変に媚びたお色気路線を目指したりしないでこの線でいって欲しい。こういうキャラは狙って演じられるもんじゃないから、変な色がついて視聴者が色眼鏡で見るようになったらもったいない。
比叡山攻撃を命じられる場面とかすごく能力を買われてるってことなのは見ている方には分かるから、もうちょっとポジティブに行こうぜ、おっさん、って見えてしまうからなあ。そこが悲劇の原因だというなら、秀吉サイドで信長絡みの苦労をおねにうれしそうに語ってるシーンとか入れておけばなあ。仕事絡みの苦労をポジティブにとらえられないのって、現代でも言えるけど一番つまんないことだと思うんだよね。
谷原さんの将軍がすごく良かったし、本田さんも久々に普通の人で(w)、全体的にキャスティングが良かったな。しかし浅利君の蘭丸はないだろう。いや浅利君好きだけどさ。テレビ見てて「あ。浅利君だ」と思ったらながらでも集中するくらいだけど、なんで森蘭丸がヒラメ顔の素朴顔なのよ。空気読めよ、プロデューサーw。
信長のかっこよさ重視の造形とか、良くも悪くも少女漫画っぽいドラマでした。しかし光秀と信長が直接言葉を交わす本能寺とかは、意味のないぬるさだと思う。