良太郎を傷つけたもの

ほんとは先週中にあげなきゃと思ってたのに、なんかまとまんなくてウダウダしている間にkorohitiさんに先を越されてしまった。し、しまった。*1
なんかよその子のおかーさんにわが子のヨダレを拭かせてしまった気分。<どんな例えよ。
とか言いつつあちらのエントリとは関係あったりなかったりの良太郎語り。

とりあえず最初に問題となる「戦い続けることがタロズを消すことになる」ということを良太郎がどれだけ分かっていたかといえば、私はまるで分かっていなかったと思ってるんだ。番組の最初に語られたイマジンの説明によれば、イマジンは現在に来る時に未来に体を置いてきてるってことだったから、戦い続けることによってイマジンが飛んでくる未来が修正されたら、タロズが自分に憑いたのもないことになって別れることになるんだろう、くらいの認識だったんだと思うんだね。未来が修正される前になにかあれば(クライマックスフォームの時とか、他のイマジンやキンタの時みたいにこちらの時間での消滅=死のような場合)、未来の体も消えるんだろうと思ってたと思うけど。
それがはっきり消えちゃうんだよ、そいつらだってそれ知ってるんだよ、という風にカイに聞かされて、良太郎を混乱させた一番大きな要因は、そんなタロズ自身の存在に直接関わるようなひどいことを自分がさせていたことをまるで知らなかった、ってことだと私は思ったんだ。

ピアノマンの時も侑斗の変身の条件を知った時も、良太郎が一番ショックだったのは自分がそれを知らなかった、知らずにそんなひどい目に遭わせてしまっていた、っていうことだと思うんだね。この前のエントリに書いたけど、善く在りたいと思う自分の思いと裏腹に、自分が間違っていないと信じてやってきたことの裏で、そんなつらい思いをしていた人がいる、というそのことが許せなかったんだと思う。良太郎が「言ってくれなかった」って怒るのは大人から見たら「言わなくても分かるでしょ」なんだけど、良太郎にしたら怒りの核心なんだと思うよ。言ったらどうなんだってはなしなのは確かなんだけど。

で、今回本当のことを知ったからといって、電王の役目を無視して戦うことをやめてしまう、なんてことが許されないことは良太郎は知っているんだよね。時の運行を守るっていうのが、今目の前の時間を営む人々の大切なものを守ることだってことはとっくに理解している。だから良太郎は迷わないし迷えない。
でもその一方で、大好きなタロズたちに自殺の手伝いさせてる自分が許せない、という気持ちの唯一の選択肢が“一人で戦う”ということだったんだと思う。なにが正しいのかを反射的に理解できちゃう少年が、「友達が消えちゃうのに、おまえ友達にその手伝いさせて平気なんだ?」と自分に聞かれて、「じゃあ僕ひとりで戦うよ。それなら良いでしょ」と答えたのがあの宣言だったんだと思う。

もちろんそんな場当たり的な正義じゃなんの解決もしない。タロズの力を借りない必殺技なしのライナーフォームじゃイマジン一体倒せないし、そうやって良太郎が死んでしまえばタロズたちも死んでしまう。タロズがイマジンである時点で彼等の消滅は“しょうがない”ことで、戦い続けるという選択肢とタロズの存在は両立できない。「それなら良いでしょ」でもなんでもない。自分一人で戦うことがタロズに対する某かの優しさになると思うこと自体が良太郎の自己欺瞞でわがままだ。

そしてモモもウラもキンタも(リュータはまたちょっと違うけど)、そんな自己犠牲の精神で良太郎と一緒に戦っていたわけじゃないってことすら良太郎には分かってないし理解しようともしていない。自分がさせていた「ひどいこと」で頭の中がいっぱいで、とりあえずタロズの力を借りないってことしか考えてない。

そんな複雑なことがモモに分かるはずもないから、あれは「ガツンと体に分からせてやる」(w)くらいの意識しかなかったんだと思うけど、そもそも良太郎だって「自分一人で戦う」ことがなんの解決にもならないことくらい分かってるから、実際に自分だけじゃはなしにならないくらい弱いんだって思い知らされて、電王の役目を果たすためにはタロズたちにこれからも“消えちゃう手伝い”をさせるしかないんだって思い知らされた時に「それでも嫌だ」って泣くしかないんだよね。モモたちが消えちゃうのも、そんなひどいことになるのに迷えない自分も許せないんだって。

んで思い出すのが肝試しでチケット使わせたデネブが家出したはなしなんだけど、あれだって「侑斗がデネブのためにチケットを無駄にした」という事実を許せるのは侑斗だけだったんだよね。他の人がなにを言ったって、“チケットを無駄にする”という取り返しのつかない事態を許せるのは侑斗だけで、今回のこのはなしも、“自分達が消えてしまう”という取り返しのつかない事態を許す理屈を良太郎に示せるのは、タロズ自身以外あり得ないってはなしだよね。

だからタイトルに戻って、良太郎を傷つけたものはなにかというならそれは良太郎自身の一面的で偏狭な正義感だと思う。じゃあ良太郎を慰めたのは?、というならそれはゼロノスの秘密を知って半泣きで侑斗からチケットを奪って逃げた時のように、仕方ないことを仕方ないと受け入れるのは、あきらめることとは違うんだと示す良太郎よりは大人な彼等の強さだと思うんだ。

*1:実際の更新は16日です。