魁!! 男塾

面白かったー!! 正直拓ちゃん初監督作品のご祝儀動員と綾野君目当てで映画としての期待はそんなに高くなかったんだけど(だって私は“アクション俳優”としての拓ちゃんのファンなんであって、それ以外のところでの言動は演技力含めて評価は微妙だからさ)すごく楽しかった。サイトで予告編見た時に「もしかして?」って予感はあったんだけど、期待を裏切らない出来だった。
えーと。最初に言っておくけど私原作にはまったくはまってません。拓ちゃんで映画化と聞いた時点で設定はチェックし、行きつけの整体にある単行本数冊(第一巻を含まずw)を読んだだけで漫画自体は面白いと思わなかったから、映画見て分かる分だけでいいやと評判もろくに聞かずに行ったから、原作ファンの「あそこを見たかった」って気持ちは分からんよ。でもまあ脳内設定補完を得意とする私でなくとも、なんも知らずに見て無問題な映画だと思う。問題があるとしたら、「この人たちいくつなの?」ってことくらい?
ファーストシーンからしばらくカメラがふらついている気がしてちょっとハラハラしたけどすぐ直ったし(あれはなんだったんだろう?)入塾式のシーンに入るところで塾長のまるめた頭をずっと映しているとか、狙った寒いギャグよりなんかツボに入る、というおかしさが画面全部にある。一応学生服(もどき)で、いい年したキャストが捨て身で体張ってるとこも含めてね。けっこうずっと声出して笑ってたよ。拓ちゃんセンス良いなあ。
以下ネタバレにつき畳みます。




脚本上で気になったのは虎丸の見せ場が序盤にまるでないから(ないよね? 一応登場時に名前は出たけど見せ場ってほどじゃなかったし)豪学連との3人になぜ虎丸が選ばれるのか分かんないってことくらい? 山田君は一人だけ若いってことでけっこう某所じゃ叩かれてるけど、もっとひどいかと思ってたせいか意外と良かったけどな。確かに一人だけ声から若いんだけど、メインの桃を演じる拓ちゃんからして意外と声はしょぼ……げふんげふん。甘くて迫力に欠ける声なんで、その辺は気にならなかった。
はなしを秀麻呂の成長物語として分かりやすく描いてるんで感情移入もしやすかったよ。秀麻呂が見てる方同様「なんでこんな馬鹿みたいなことマジにやってんの?」と思う一方で、その馬鹿なことをマジでやり続ける富樫や桃太郎の在り様が馬鹿なんだけど男として筋が通っててかっこいいものとして描かれているから、この愚かさはこの世界では美しいものなんだというのが見ているこっちもすんなり胸に落ちる。秀麻呂が意気地なしなりに、油風呂に耐えてくれる富樫の友情は自分なんかの身には余るものだとちゃんと理解できるやつなのも良いし、脱走を見逃した桃と二人の懲罰房で、自分の上に岩が落ちてくる、という場面で恐怖で我を忘れるより、その岩を支える桃が限界にきていることを察して「俺は覚悟を決めたからもう良い」と叫べるやつなとこもすごく良い。このシーンは秀麻呂の叫び声で持ち直した桃が岩を引き上げ直して暗い画面にさっと陽が射すのがすごく美しくて、ほんと良い場面だった。秀麻呂がこういうやつだから、ラストで桃のために死力を尽くして応援の気を送るのが、秀麻呂だってことが納得できるんだよな。

忘れちゃならねー綾野君は大満足なできでした。台詞少なかったけどw。
どの程度のアクション経験があるのか分かんないけど、一応彼のプロフにはかつては特技・テコンドーの記載があったのよね。岩場でロープにぶら下がってのアクションシーンってことで、動きも制限されるし心配していたけど、飛燕と富樫が岸壁で舞うように戦う姿は文句なく美しかった。顔を傷つけられた後の狂気の血まみれ笑顔も美しかったし(狂気だけど無垢っぽいのが良いのよーv)満足満足。
ただまあ近年“エキセントリックな美形ポジション”を獲保した感のある彼は、あまり一般的尺度の美形じゃないと思うんでこの扱いにはなんだかなー、という感はあるw。<おおきなお世話w。
しかしエンドロールでキャスティングにオガワシンジの名を見た時は思わずふいたけどね。綾野君の意外な仕事あるところオガワシンジの名前ありw。いや、現場で発言力のある人が綾野君を認めてくれるのは、ファンとして非常にありがたいんですがw。

桃と伊達のラストバトルもすげー良かった。伊達の榊さんは最初甲冑つけた格好が上半身ばっか大きく見えて「美しくないなあ」と不満だったんだけど、最終的に鎧も得物も捨てた殴り合いで決着だったからね。
ただこの殴り合いはけっこう、この映画唯一の微妙ポイントっていうか、拓ちゃんのこだわり的にはずせなかったのは分かるんだけど、殴り合いのダメージって見てる方は分かりづらいし、生理的な不快感が先に立ってあんま良いことないと思う。
喝魂旗を支える秀麻呂のエールで、一旦消えたろうそくがバッと炎を上げるシーンのカタルシスとか、あり得ないけどそんなん良いよ。伊達の腕に刻まれた月光と飛燕の名を見て桃が伊達に肩を貸すシーンとか、とにかく気持ち良かったです。
エンディングで流れるTHE BACK HORNの主題歌「刃」もすごく合ってた。
拓ちゃんも照英もバックホーンも、私は大好きってほどじゃないんだけど、なんとなく好きだった気持ちの温度が見終わったらちょっと上がる感じの映画だった。帰ってから「刃」の入ったバックホーンのベストアルバム買っちゃったもん。*1
DVDは最初から買う気でいるけど、今回見た映画館は遠いからもう行きたくないけど(近いうちに奈緒子見にまた行くけどさ(-_-;)地元にかかるんならまた映画館で見たいな。もちろん低予算なのは見て分かるししょっぱい部分もそれなりにあるけど、押さえるべきところはきっちり押さえた良い映画だと思う。これがほんとに全部拓ちゃんの手柄ならすごいと思うが、こういう助言をくれる人が回りにちゃんといるってことだとしても、かなり拓ちゃんのことを見直した。

興味が少しでもある人は、ぜひ劇場で見てあげてください。パンフにある「熱さだけは誰にも負けない」という文字が、この映画の魅力を端的に語っていると思います。

*1:綾野君は別枠。“ちょっと好き”じゃないからw(…)