奈緒子

「ただでさえ冗漫になりがちな林民夫の脚本で、130分も撮っちゃダメだろ」と軽くげんなりしたけれど、思ったより長くは感じなかった。まあ「ここ漠然と奈緒子の行動撮ってないで、奈緒子を見る雄介映し込んでおけば時間短縮できるのに」とかその逆はいっぱいあったんで、20分くらいは短縮できると思うけどね。ただ走ってるだけのシーンが多いのは、そのしんどさが共感のよりどころになるはなしだから仕方ないだろう。レースのシーンはどこも緊迫感あったから気にならなかったし。
<レースのシーンには綾野君が出てるからだろうというつっこみはナシでw。
綾野君は予想以上に良い役でびっくりしました。例によってセリフは少ないんですが、そもそも映画を見る限り、最初の大会で雄介が倒れたのは奈緒子じゃなくって黒田のせいだよな。給水できなかったことのダメージはあまり感じなかったし、黒田と競り合ったせいでペース崩したせいでしょ。そもそも雄介は奈緒子より黒田との方がずっとらぶらぶっぽいと思うのは私が邪眼の持ち主だからでしょうか。
雄介16才、黒田晋18才を演じる二人の実際の年齢差8才っていうのは軽くギャグだったけど、綾野君がエステ行ったのってどう考えてもこの役のためだなー(苦笑。まあ三浦君には勝ち目ないけど上野樹里には勝ってたと思うよお肌のハリはw。ひげの目立たない人だしヒョロくはないけど線の細い体型もあっておっさん臭くはなかったからいいか。追い上げる雄介に笑みまじりの声をかけて、引き離すところが実に燃えるぜ! 途中追い越されたところで、髪をほどいて意地で追い越し返し、引き離すとことか実に良かったーv。実際きれいな体だとは常々思っていたけどあそこまで私好みの体型だなんて自分の眼力が怖いw。
三浦君は無邪気だけど脆いところのある雄介をうまく演じてたと思う。こういう難儀な子の役は三浦君だよなー。実に良かった。上野樹里も珍しく影のある役だったけど良かったと思う。たぶんもっとはまった感じの線の細い子だったら、雄介のために走る強さとかは出なかったと思う。
でもはなし最後まで見ても、奈緒子と雄介に決着ってついてないよね。つーかこの二人の決着はフェリーを見に走るところでついているからそこまでしかこの二人のはなしじゃない。あとのはなしは雄介と部員とか雄介と黒田とかのはなしだから奈緒子は出る幕じゃなくって、さらにいえば映画のクライマックスが部員からタスキを受け取ることより黒田とのせめぎ合いになっているから、雄介と誰のはなしかよく分かんなくなってる。
個人的には黒田と雄介のはなしで無問題だけどさw。
でも奈緒子と雄介がフェリー見にいくところは良かったよ。この映画って“走る”ってことが気持ちを共有する方法としてまずあって、お互いに相手の苦しさを理解できるから、その苦しさをいとわない相手の気持ちが分かる、ってシーンがあちこちにあるけど、その辺りがきっちり描写されてて分かりやすい。
惜しむらくは部員と雄介の関係性で、吉崎が走っていて「こんなに雄介と差がついていいのか」と言われたことを思い出すシーンとか、回想シーンで入れるんじゃなく、練習のシーンで描写しておけば、大会では吉崎のモノローグですんだのに。
描写が濃かったのは吉崎くらいだけど回想シーンがとってつけって感じだし、他は大会中の選手のモノローグで片付けてるから、みんなあまり必然性のない怒りでネチネチ言ってるように見えてさー。
個人的につまんなくはないけど、さじ加減が悪くて冗漫な映画。並べ方のパズルを間違えたままで、間違えてることに気付かずに出したような映画だと思う。綾野君部分はちゃんとできてるから私は良いけど(って、良いんかいw)。
ところでこれもキャスティングはオガワシンジなんですが、私今頃になって綾野君の事務所がオガワさん絡みなことを知りましたわ。ああなるほどねえ、って思えるような思えないような(笑。なんだかんだ言ってどの役もハマってて楽しいし良いんですがv。