少年メリケンサック

http://www.meriken-movie.jp/
えー公開日初回に勢い込んで見て参りました。理由の多くは今日ならTOHOプレックスは1000円で見られるからなんですが、「なんでそんなに見たかったんだっけ?」と疑問に思ってたんですが、この映画トモピー出てんのよね。忘れてたよ。
最近映画づいてんので宣伝ディスプレイとか見てたんですがあまり情報は探してなくて、クドカン監督作品なのも一月前くらいに知ったんじゃなかったかなあ。まあ私クドカンはかなり脚本家として上手い人だと思ってるけど好き嫌いで言ったら必ずしも相性は良くないと思ってるんで、クドカン脚本・監督作品と聞いた時もクオリティに安心感が増したくらいで、その点もまあこのキャスティング見たら最初からさほど心配でもなかったしねえ(^_^;。
まあそんなこんなで見てきたんですが、ワタクシこの映画の感想を万人に通用する視点で書くの無理です。それでも良ければネタバレ注意で。
まず面白いか面白くないかで言ったらすげー面白かった。ずっと口開けて笑ってて閉じる暇がないくらい。なにが面白いってもう、なにもかも面白い。
宮崎あおいのカンナが可愛くてカンナに関わるすべてのやりとりがおかしいんだけど、はなしの中核を為すのがアキオ@佐藤浩市のろくでなしっぷりだから。もうアキオが諸悪の根源。アキオさえもっとマシな人間ならこんなことにならないでしょってレベルのはなし。
青年アキオ@佐藤智仁は青年時代と聞いて出番はそんな期待してなかったんですが意外と多いです。アキオの出番の4割までいかないけど3.5割くらいは行ってそうな感じ。すげーリアルだと思ったのがハルオにギターを教えるパンクかじりかけのアキオがリーゼントなのな(笑。
んでトモピーに関しては浩市さんの青年時代なのは意識したけど撮影は見てないようなはなしをしてた気がするけど、ほんとトモピーのアキオと浩市さんのアキオが同一人物にしか見えないのね。浩市さんのアキオって、トモピーのアキオと(まったく成長してないって意味で)なにも変わらないから当然なんだけど、佐藤智仁佐藤浩市のガワをかぶって演じているんじゃないかと思えるくらい二人のシンクロ率が高い。もちろん身体能力としての役者力として、浩市さんの方がずっとすごいんだけど。
まあアキオはひどい役です。ギラギラやゲツクで付いたファンにはハードル高いだろうなってくらいに口だけのロクデナシだからフォローできないんだけど。爆笑したのはアキオがハルオに死んだと聞かされてた父親に会うシーンで、死にかけでヨイヨイの父親がアキオに「地獄へ堕ちろ」って言うとこね。いや言うわけじゃないけどw。
でさー。なんで私がこの映画を平常心で見れないかっていうと、私この映画よりは時代が下がるけどこういう人たちに直接関わる立場にいたからね。だからこの、立場とか筋道とか関係ない、誰よりもわがままであることで一番優位に立てるという人間関係がすげーリアルなんだ。たぶん普通の人には笑わせどころであるようなこのアキオの人物像が「うわー。シャレにならねーーー(^_^;」と思うと同時に、「クドカンっていくつだっけー。なんで知ってんだろう(^_^;」と思いながら見てたw。
ただまあ実際にものごとを動かすのはそういう、誰よりも人の迷惑考えない人々の求心力だってことにも実感あるから私。
たぶんこのはなしやこいつらの人物像を美しく解釈できる人もいるだろうし、私のこの感想を被害妄想入った関係者面の知ったかだと思う人もいると思う。普通に見たらオチはちょいポカーンだけど楽しい映画なんじゃないかとも思うよ。
ただやっぱさー。10年以上前から当時の思い出のある人たちの訃報にふれる度に、「あんな生き方してたらしょうがないよねえ」という感想持って生きてきた人間にしたらこのオチはポカーンじゃすまんのですよ。ありがちすぎて、美しく解釈したくても「いやそんないいはなしじゃないだろ」としか思えない。タスケテー、って感じ。
だってこの映画は25年前だけど、そこまで行かないけど20年くらい前にアキオみたいな人たちを間近に見ていた私にしたら、その当時のことって(こんなに時間がたってても)良い思い出なんかじゃないし思い出したくないもん。でもなぜそうなったかっていう動機の時点で「それが好きだったし今でも好きだから」なのは変わらないし(もう日常的にパンク聞いたりはしませんがw)当時のあの人たちがロクデナシだと思う気持ちも、この映画のアキオをカスだと思う気持ちも変わらないけど、ロクデナシだけどあの人たちの作るものが好きだったことは否定しないから、このはなしの結末は当然だと思うけど切ないんだよね。だってどんなロクデナシでも好きなもんは好きじゃん。
というちょー個人的な感想ですいません。まあ見どころとしては勝地君のマサル田辺誠一のTELYAはスバラシーです。特に勝地君のヒモっぷりは出色w。
あとさー。私が浩市さん意識したのって「新選組!」の芹沢鴨からなんだけど、アキオって完全にキャラが鴨だよね。いや浩市さんがワンパだつってんじゃなくて、むしろ表現としては全然違うんだけど人物像って点で。
ある意味あんなロクデナシでもあの時代ならなにかできたというか、今の世の中ロクデナシにできることはないというかw。

まあ2ちゃんパンク板辺りで「あんなのパンクじゃねえ」とか激怒してる人がいそうだけど、個人的には過剰なくらいの糞リアリズム映画でした。クドカンは分かってるなあ。あと終わってから買ってきたオフィシャルブックのインタビューで浩市さんがバンドとしての少年メリケンサックを「クソだね!」と言っていたのも分かってるなあと(笑。インタビューで出演者みんながパンクってなにかを聞かれてるんで久々に考えちゃったけど、パンクって“言い訳”だと思う。でも自分が生きていく時に、自分を信じるよりどころって必要なもんだと思うのさ。たとえそれが間違った思い込みでもw。