TAJOMARU

初日の昨日に行くつもりだったけど、昨日の休日出勤はちょっと内容的に外すわけにいかず、レイトショーで見たら絶対寝ると思って今日にした。でもつっこみどころの多さに眠くならなかったから昨日でも大丈夫だった気はする。
ちなみに前売り券はあったんだけどTOHOシネマは今日明日1000円なんで、つい欲にかられて前売り使わず見ました。もっかい見にいく暇あるかなー。
一応ネタバレあるんでたたみます。




とりあえず「絶対女を捨てない。己を曲げない。そしてどこまでも自由。」のキャッチコピーは看板に偽りあり過ぎです。だって捨てるも捨てないも、阿古姫は全然直光のものじゃないもん。むしろこのコピー阿古姫に進呈しちゃう。絶対男を捨てない。己を曲げない。そしてどこまでも自由!
直光の方は曲げるほどの己がそもそもないし、そのわりにどこまでも不自由だしさー。事前情報できっと私直光きらいだろうなと思ってたけど、きらいとすら思わなかったから視聴ストレスはなかった。だって中身なんかないおっとりぼっちゃんの直光くんが、不測の事態で身分を追われて盗賊ごっこに走るけど、結局救われて今度は駆け落ちごっこに走るってはなしでしょー? 兄と自分を裏切った桜丸をなじるシーンとかあるけど、そもそも館に帰るまで桜丸に裏切られたことすら知らないんだから、たいしてつらい思いしてないでしょと思っちゃうよ私。
冒頭の子役のシーンは見せ方が若干タルイけど関係性はきっちり見せてたから必要なシーンだったと思う。むしろ大人になってからのシーンに関係性がまるで見えないのがさー。しょせん次男でしかない直光の信綱への鬱屈とか、能力で直光に劣るのにあえて立てられる信綱の鬱屈とか、兄弟同然とか言われてもけして彼等と同じではない桜丸の野心の目覚めとか大人キャストが見せようよ。なんでいきなり信綱はひねくれて、直光はネジのゆるいおめでたくんになってるかなー。
直光って良い悪いで言ったら絶対良いやつだけど、この人らの関係性ってしょせん弱肉強食の食物連鎖だよね。直光は桜丸より強いからどうにでもできたけど優しいから食っちゃう代わりに憐れみをくれたんだよね。でもそれはどちらにしても「おまえは弱いんだよ」と言われることで、じゃあ寝首かいちゃおうと思う桜丸の気持ちはすごく分かる。きっと私でもそうするw。
田中圭君の桜丸はところどころやっぱ不安定なんだけど、鬱屈の根拠はきっちり見せてたんで気にならなかったです。ほんと良い役だなあ。ダークヒーローというには覚悟が足りないんだけど、子役が上手かったのもあって一番気持ちの分かる良い役でした。なにしろ畠山兄弟とか阿古姫とかのやんごとない人たちが脳天パーばっかだから(^_^;。
目当ての綾野君を含む道兼一味はたいへん楽しそうでよろしかったです。ほとんど本筋に関係なく楽しそうなんだけどさ。つかここってもっときっちり描くべきとこだったんじゃないかなあ。直光が道兼一味との生活をどう思ってるかをもっと描いていたら、信綱や阿古の裏切りでそういう名誉や将軍の思惑に踊らされる生き方に嫌気が差した直光が盗賊暮しの自由を選ぶという風に見えたと思うんだけど、なんか珍しいことして遊んでるって感じの物珍しさや好奇心にしか見えないから、館に戻るとこも最初から道兼たちのことは頭になかったように見えちゃうんだよねー。彼等の形見を身に付けて桜丸を討ちにいくところがそこだけ見たらすげー良いシーンなだけにもったいないおばけが出そうですよ。なんか変にダラダラ長いシーンはいっぱいあるのに、肝心のシーン描いてないよー。
猿@綾野剛可愛かったから良いけどさ。ほんと可愛かったよ。直光が仲間になるシーンの「こんな品の良い多襄丸はいないだろ」って猿の台詞、あれつっこむところだよね? 「おまえこそこんな花のような盗賊がいるかー!」と画面につっこんでしまったよ。駕篭の姫君と向かい合うとことか死に顔とかいちいち花のよう。室町時代なのに刀振るより回し蹴りしてるしw。
全体に登場人物の誰にも感情移入できないので、小栗旬が演じてる人なら誰でも可哀想と思える小栗ファンか、田中君のファン以外は見なくて良いと思います。綾野君は見る価値があるくらい可愛いですが、文芸というほど普遍的な気持ちの動きを描いてるわけでもないし、エンタメというほどの爽快感もないので見た後になにも残らない。そのわりに退屈はしないのがある意味マジックw。
チケットがあるからもう1回は行くかなあ。時間がもったいないとは思わないってことはそれなりの面白さはあるんだけど、なんかもったいない映画だったよ。

追記(9月27日)

まあ最初に見た時も思ったんだけど、このはなしってそもそも、御所様の言ってきたことを最初に直光が阿古姫にちゃんと説明して、最悪でも阿古姫連れて出奔とかせずにまともに事情を説明してたらこんなことにならなかったよね。影時さんは、なにをいい年して次男に肩入れして事態を泥沼化させてるのさ。
その辺非常にマッチポンプというか、おはなしのための悲劇なんでハートにきません、とあえてバカみたいに言ってみるw。ほんと「ああおはなしだなあ」としかw。
改めて見てやっぱ良かったのは桜丸で、それは桜丸の気持ちが理屈じゃないからだと思うんだ。芋一つを盗んで袋だたきになってるような、名前すら持たない野良犬みたいな存在で、それでも「兄弟同然」なんていうのは言葉だけで、ごっこ遊びですら桜丸に官令の職は名乗らせない。あの子供時代って意外ときっちりしてるなあと思うのって、直光は桜丸を“召し抱えた”んだし、信綱は桜丸が“ずっと畠山に仕える”って言ってるんだよね。直光にされたことを“優しくしてもらった”と思わずに“施しを受けた”と感じる心を“盗人根性”というならその通りだけど、結局直光って、子供の頃からずっと言葉の使い方が無神経でコミュニケーション能力が足りなくて、いらんこと言って事態を悪くさせてるんだなあ、としか……。うん。改めて見たらすげーむかついたから言い方キツイです@直光。
実際子供の時に御所様が桜丸連れてっちゃえば良かったんじゃんってはなしだったんだけどね。あんな親密になるまで畠山に通ってたのかよ。無理あるなー。
ただ見ていてびっくりしたのは、ワタクシ集中して見ていたものは映像見たら次のセリフと画面の構図まで反射的に思い出せる北島マヤのような人なんですけど、かなり退屈だと思ってたはずのこの映画で、きっちりそのガラカメ能力が発動したことです。確かに猿の出番は今か今かと、目を皿のようにして見ていたけどよw。
田中君がすごい殺陣がプレッシャーだって言ってたけど、桜丸の殺陣はみんな良かったと思うけどなあ。まあ名を捨てて阿古姫と消えた直光君に一人で生きていく生活能力はあるんでしょうか。勝手に野垂れ死んでしまえと思う自分がいるw。