タンブリング/#8

http://www.tbs.co.jp/tumbling
脚本:渡辺 啓 演出:伊藤礼
今週も文句なく面白かった。キャラが全員立ってて、その立ち方に応じたお互いの思いやり方があって、終わった後「ああ良かったなあ」と思える。ドラマってなんでか「なんでこんなやり方するんだろう」と思うことがすごく多いんだけど、この番組ってすごい、おはなしが「あって当然」の「気持ち良い結末」に行くところが良いよ。それが予定調和になるんじゃなくて、その結末に行けるのが当然の、優しくて肝心のことは分かってるキャラばかりなのが良い。
んで今週のサブタイには「さようなら……カラ高新体操部」とあって、しかも途中で航(山本裕典)が柏木(AKIRA)の退職に理解を示すし、「えー。ホント辞めちゃうんだ?」と一瞬思ったんだよね。「いやここで柏木退場ってないと思うけどなー」と思いつつ。やっぱなかったね。タンブリングスタッフは常に正しい!
なんつっかさ。元Jリーガーでサッカー選手としてはそれなり以上だった柏木が、その当時の仲間に呼ばれて好意的に評価してくれてる人がいたことを知ったり、実際子供に教えることに楽しさを感じるんだとしても、柏木がカラ高体操部のためにしたいことより経験者のちょっとした助言の方が成果に繋がることに寂しい思いをしたり、彼等のためにしたことが無意味だと思って黙って引っ込めたりした心の痛みを放置して良い理由にはならないと思うんだ。だって彼等にとって、共に新体操をすることは、最も幸福なことのはずなんだから。
そのために、熱意を持って教えてくれてるように見えたコーチの振り付けが去年の優勝校の丸パクリだって分かったり、それに気付くのが柏木の行動を見ててつべを見てた翔子先生(国仲涼子)だったり、コーチが開き直って彼らの夢を侮辱したことに誰より早く柏木がキレル、とかのすべてがほんと素晴らしい! 柏木になにもできないなんてことはない、そもそも彼等がここにいること自体が柏木がいたからだっていうそこで、柏木にとってなにが幸せかなんて関係ない俺たちが柏木といたいんだ、と彼等が思うことが柏木にとってなによりも幸福で、その気持ちを証明するために、一晩かかって新しい構成を完成する、っていう流れが素晴らしいよ。画面に映る彼等の演技の完成度がそのまま彼らの気持ちの深さだって、見たらそのまま分かるんだもん。
でもって演技を終えた彼等の顔の青タンは傷メイクだろうけど、きっとこの番組のために彼等が青タンのひとつやふたつ作ってることだって、見てるこっちは分かるじゃん。彼等が高校新体操部の部員じゃなくて、はたちをいくつも過ぎた役者だってこともこっちは知ってるもん。出てる子のほとんどを元々役者として評価してたこともあって、彼等が山本裕典だったり大東俊介だったりすることは常に頭の中にあるんだけど、それが物語に集中することを妨げない、彼等が仕事として役になりきるために生活と頭のすべてがそれであるような高校新体操の部員と同じ努力をする、それが仕事への熱意であることが同時に分かることが、ほんとにこのドラマを嘘のない良いものにしてると思う。スタント使うことが悪いとか全然思わないけど、使えば見せ方の制約はずっと多くなるから、実際に自分達でできるようになることで、そういう見せ方の幅を広げている事実がすげーよ。
ああほんとなにもかもが素晴らしい。なんで視聴率低いんだろう。もっとも視聴率の低さを気にするところに、こんな良いドラマは作れないと思うけどさ。
んで今週水沢(柳下大)と木山(大東俊介)を肩も触れん距離で湯船に浸けるのが、例のはなしの渡辺・伊藤コンビだってのがすごいよね(笑。