クレオパトラな女たち/最終話

脚本:大石 静 演出:岩本仁志
最終回になっていきなりラブコメですよ。ハタチも過ぎた一人前のオトナが、中学校の学級会じゃあるまいしおなじ価値観で総スカンとか笑いばなしでしかないじゃん。
そもそも「息子が独り立ちするまで」つったって大学出て研修医終えて医者になっても、まだ母親が必要だからおまえグダグダ言ってんだろってはなしだし、ほんと峯太(佐藤隆太)ってどうしようもないよなー。こんなやつ好きになった自分が悪いって納得するしかないよなー。裕(綾野剛)だって市井先生(稲森いずみ)だってさ。ただ結局はなかったことになって、とりあえず元の生活に戻るっていうのはそういうもんだと思う。裕だけが戻れなかったのは、裕と峯太の生活を支えてたものが裕の恋という、無視するには問題点が近過ぎるものだったからだよね。
峯太の父親に近づいたりとか葵(北乃きい)と親しくしたりとか、裕は日々確実に終わりに近づくこの恋を、自分一人で抱えているのが寂しかったんだと思う。どうせ実らなくても、自分が恋をしていることを誰かと話したかったんだよね。ああそう考えたらこの気持ちってすごい女性的かも。裕の恋は結局、峯太が裕の恋に応えないことを自分に許せるくらいコドモであることでかろうじて成り立つものだったから、自分に恋している相手と、気持ちに応えられないまま一緒に暮らしてるとかナシという当たり前の事実に気づいちゃったら、そりゃー終わりにするしかないもん。
でもそんな風に、「自分を好きになるわけがない」と分かっている相手を、それでも好きでいて世話を焼くのが裕には楽しかったんだろうなあ、と思うとやっぱカワイーなあ、というか。峯太に抱きしめてもらって離れる瞬間の裕がまるで中学生のオトコノコみたいで、なんか好きな子と成り行きで付き合えた思春期のオンナノコみたいな、よく考えたら幸せでもなんでもないんだけど本人的には楽しいんだろうなあ、みたいな感じがして、バカみたいかも知れないけど、他人が否定することでもないよね。そういう裕が自分に許したせいいっぱいの恋の見返りに、訣別するこのシーンはちょっと泣けちゃったよ。
まあ黒崎裕という役が「綾野剛が演るとこうなる」という役だったのは疑い様のない事実だし、いちいち可愛かったのも否定せんけど、例えばmotherが大好きだから浦上真人だったことがうれしかったり、シュアリーサムデイが大好きだから岩崎秀人を演じたことがうれしかったりみたいな、絶対的幸福感には繋がらなかったなあ。それはたぶんこのはなしの主人公である峯太にとって、裕が影響力のある人物じゃないからだと思う。綾野君が演じた裕の揺らぎとか人間性とかは、峯太に影響あるもんじゃなかったからだよね。裕の言葉をどう受け止めたかすら語らずにすましてしまえるような関係なんてドラマチックになりようがないし、結局裕っていうキャラは、存在として魅力的ではあってもこのドラマのドラマを支えた人物じゃないんだってことなんだと思う。
そう言いつつ毎週綾野君が見れたのはうれしかったし、dvd-boxは迷わず買いますよ。特典映像見たいもんw。

クレオパトラな女たち [Blu-ray]

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