今年の白倉さま

去年一昨年の商業的失敗を踏まえ、東映が守りに入っているか否かはともかく確実にいえることは、東映側の立場は弱くなってるだろうなっていうことなんですよ。

それは単純な商業論理として、実績が上がっている時には冒険的な試みでもスポンサーを説き伏せることができるけど、失敗が続いた後では「手堅くやってください」と言われりゃなんにも言えないだろうなってことで。

というところで今年のメディア媒体における白倉Pの発言ですが、私にはスポンサーに向けた「手堅くやっていきますよー」というパフォーマンスにしか見えないんですわ。

だってカブトって手堅い? 確かに最大ヒットだったらしい555のアクセルフォームを引っ張ってきたのかな、って部分はあるけど言ってみりゃそれだけだよ。アクセルフォームを早回し的演出で見せてたのに対し、クロックアップは周りを遅くするスローモーション演出(個人的には、これもカブトの戦闘シーンがかっこよく見えない原因だと思う。スピード感が削がれる)で見せてるのもあって、私ごときのにわかユーザーにはどこがかぶってるのか分かりません。

視聴者の世代性別を超えて番組で一番目に付くのは主人公のキャラだと思うから、そこに天道みたいな強烈なのを持ってきた時点で白倉さんの「手堅く」なんて眉唾感ありありなんですが。

番組のヒット要素がどこにあったとしても、最終的にトータルで“面白く”なければ作品の評価にはつながらないし、作品の評価だけ高くても商業的に成功しなければ成功したと言えないことなんて、うちら見ているだけの人間より実際に作品を作ってきた白倉さんが一番よく分かっているだろうし、その点で作品性と商業性のバランスがうまくとれていない感がある点がカブトがいまいち面白くない原因だとは思うけどさ。

そもそも本当に手堅くやる気があったら、メインライターに作品的評価はかなり最悪だった「Sh15uya」の米村さん連れてくるよりも、キャラを固める序盤だけでも実績のある人に頼むだろうし。

途中から響鬼にかかりきりになったことでカブトの企画が十分に練れなかったのはあると思うし、その対策として手近にあった響鬼の中から「自分ならこうする」という要素を出してるんじゃと思う部分もあるんですが、とりあえず白倉さんのモチベーションは言うほど下がってないと思うし信じたい。ただ事実上東映特撮の看板背負う名物プロデューサーになってしまった以上、無茶はできないんだろうなと思うけど。

実は人間は好きに作ったものが一番勢いがあって面白いっていうのは事実だと思うんですわ。