MW

のっけから配給元としてアミューズソフトエンタテイメントの名が出てしばし目が点になったんですが、どのルートから来たか分からなかった健の初主役はそんなわけですか。でもなんで? 玉木も山田君もアミューズじゃないよね。アミュに絡んでるのは主題歌のflumpoolくらいなのに。
でもまあ健がやった0章で、燦然と名前がクレジットされてたわりにどこに出てるか分からなかった小松彩夏の謎は解けました。こっちに出てたから。映画連動キャストだったからなのね。
玉木君の演技プランが腑に落ちなかったのは、彼が“ダークヒーロー”という言葉を使ってたからなんですが、結城はダークヒーローじゃないでしょう。ダークヒーローって正義を行うために邪悪な力を使うものなんじゃないの? これって犯罪映画とかでしょ。フィルムノワールとかさ。まああまり核心に触れる発言はしない気もするけど、書いててもきりがないので畳みます。でも面白いか面白くないかで言ったら面白かったよ。



結城がダークヒーローじゃないって言うのは、結城のやってることが断罪じゃなくって復讐だからだよね。目的のために意志的に悪を行う、本来の意味の確信犯が結城だと思うんですが。
手塚治虫の名前は英語表記で“ストーリーのベース”みたいな感じです。確かに別物というか、ある意味メロドラマだった原作に比べて、こちらはけっこう揺らぎなく結城の人物像を描いた犯罪映画。原作とはまるで別物なんだけど意外と気にならずに楽しめたのは、結城と賀来の人物像がすげー私的に分かりやすかったんです。この二人の関係がなぜこうなのかっていうのがすげー納得いったから、突っ込みどころ満載のストーリー展開が気にならなかった。
そりゃまあね。この映画の玉木みたいなガリガリの人、変装してても1回見りゃ覚えるでしょとか、刑事が捜査内容を同僚に明かさずに出ていくとかあり得ないでしょとかそういうのは思いますよ。
でもこの映画って、結城美智夫という人物を描くための映画だからそういうのはたいした問題じゃないんだよね。その上で結城っていうのは、家族が殺されたから政府が憎いわけじゃなく、悪事が隠蔽されたことが許せないわけじゃない、ただそこから自分と賀来の不幸が始まったということが許せないんであって、MWによって正常な善悪の感覚を失った自分の気持ちの赴くまま、自分達の不幸に関わった人間を殺していくだけで、自分の命も先がないとかそういうのも、たいしたことじゃないんじゃないのかな。
んで賀来と結城って関係が「俺たち」で、二人でワンセットなんだよね。結城が賀来を助けたことでMWを浴びた、とかそういうのはあっても本質的にはそんな問題じゃない。結城が賀来に自分のしたことを逐一報告するのとか、賀来に自分の体験を共有させることで、自分達が別々の人間だということを認識させないようにしてるんだと思う。賀来はそこのところで自分達が同じ人間じゃない、結城のしていることは許されることではない、と理性では理解しながら、自分自身より大切な結城という自分を裁かせることができないんだと思うんだ。
とまあそういう感じで二人を見ていましたんで、私的には分かりやすいおはなしでした。
すげー個人的なはなしだけど、始まる直前に食ったタイ料理のランチが朝一で食うには胃に重く、映画始まってすぐのカーチェイスシーンで局彩色のタイの街がグルグルするシーンを見てると気分が悪くなって見にきたことを後悔したくらいだったんですが、見て良かったと思いました。っていうか、近くの映画館に来ないから、見にいかないつもりだったんだけどね。なんか健が絡むとなつらるに判断力が飛ぶわーーー(θωθ)~*
ただこの映画撮ってるって噂になってたのって1年以上前だったと思うけど、出演者のビジュアルはちょっとヤバイです。玉木はやせ過ぎて結城っつーより幽鬼みたいだし、山田君は服の上からでもお肉がプニプニですよ。もっくんも今と比べたら「誰?」ってくらいにオーラがない。石橋凌はおなかとおしりをユサユサさせながら、バイクと追いかけっこの熱演でしたけどさー。
石田ゆり子は笑っちゃうくらいに手塚ヒロインでした。浅はかで考えなしで、なんの力もないのに世界を救えると思ってる、「バカジャネーノw」としか言い様のない女。結城が秘密を書いた手帳を受け取って、戦闘機のパイロットの視界に入るように京子を突き飛ばすシーンは圧巻でしたw。
「みなさんそれしか興味ないんですか」と思うくらいに「MW 同性愛」で飛んでくる人って多いんですが、「相手は自分じゃない」と理解しないで恋愛はできないと思うんで、この二人の関係は恋愛じゃないと思います。むしろそういう風に相手を他者として認識できたら、もう少し救いのある関係になったんじゃないかなあ。
それでもこの二人にとってそれぞれが、なによりも特別な世界にたった二人、という関係だったのは確かだと思うし、その執着は恋に近いとは思います。ラスト近くMWを抱いて海上に落ちる賀来を見る結城の、子供のように動揺した顔は見物だったよ。
「もう結城を止める賀来はどこにもいない」ってラストって、数少ない原作リスペクトな部分なんじゃないかと思いました。