宿命1969-2010/#8(最終話)

脚本:坂上かつえ 演出:遠藤光貴
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ああ最後の最後にgdgdだなあ、って思うけどこれ原作どおりだからしょうがないんだよねえ。でも宣子(小池栄子)の仕打ちはちょっとひどいというか、元をただせば崇(北村一輝)の詰めの甘さが悪いんだけど、なんか腑に落ちない。大学時代からの付き合いつっても海外留学となったら自然消滅で良いやと思われてるというのが普通の判断だし、いわばフリーの崇が海外留学生と付き合ってたって怒ることないでしょ? その相手が諜報部員だったことなんて単なる災難じゃないのかなあ。一介の留学生だった崇になんて、利用価値もないんだから国家の損失もないでしょ?
というところで崇の受けた仕打ちが不当にひどい気がしてしまうところがなんだかなあ、って感じだけど、局面があまりにおはなしレベルで急転直下に不幸、というのはあっても、政界への足がかりを失ったとしても、崇には父と戦っても崇を選ぶという尚子(上原美佐)も、不遇を嘆いてくれる母親も、その状況を心配してくれる家族もいる、という中で、他ならぬ崇自身の中に三奈(真野響子)の育てた政治への理想がある、というところに落ち着いたのは良かった。原作のワンスアポンは妹の縁談が決まったところまでなので、崇の状況は続編の要素なのかも知れないけど、白井代議士のところに出向いて思いの変質を指摘し、自分は必ず国政の場に出る、と告げた崇が国会議事堂を背負うラストはドラマの筆致だよね。
いや実際このドラマの北村さんってすごく良いんだけど、崇の人物像はあまりに繊細過ぎて文字どおりドラマを背負うには役不足、って感じだったからさ。そこは元々このはなし、主人公は三奈ってはなしなんだから仕方ないんだけど、最後の最後に崇の意地を見せるはなしになってて良かったです。権力への妄執に囚われた三奈をただ追いかけていた青い馬=崇が、つがいで駆けるという意識の変化を尚子に絵で見せる、という見せ方も抑制が利いてたし。
実際1969年の東大抗争でいろんな人がいろんなものを失ったかも知れないけど、みんな失ったもののかわりになるものはそれなり手に入れてるし、ほんとはあそこで失ったと思うこと自体勘違いなんだと思うんだ。それは家族のためという信念の元、揺らぎなく志を果たそうとした白井代議士(奥田瑛二)も同じで、白井には志をまげる局面はなにもなかったかも知れないけど、結局は野望を追う中で自分自身の理想を変質させて失っちゃってるんだよね。
三奈の人物像や彼女の理想が美しいものだとは思わないし、それはそれを受け継いだ崇だって変わらないけど、不純物やまがい物を内包していても、なにかを追いかけるというのはやっぱ美しいことだと思う。そういう意味で野心のために首相を失脚させ崇(というよりむしろ尚子)を切り捨てる白井もやはり、醜いけど美しいと思ったよ。
透(細田よしひこ)と和裕(田中健)は特筆するほど見せ場のある役でもなかったけど、こういう行き届いたはなしで行き届いた演技をしていると、役者としての評価は一気に上がりますよ。細田君がこの役で良かったーv。
毎週楽しませてもらいましたv。