警視庁失踪人捜査課/case06

http://shissou.asahi.co.jp/
脚本・演出:寒竹ゆり
なんかある種の貴種流離譚みたいな、やたら面白いはなしであった。父親は高名なピアニストで才能は受け継いでるけどそれを世間に見せる機会はなくて、でも本人は父親にも自分を虐待した母親にも愛情があって、腹違いの姉妹と父親への愛情を共有してて、って、こんなにも高潔な魂の物語が下らない男の殺意ですらない身勝手さで終了ってないだろう。仕事人に依頼するレベルのはなしだぞこれ。でも過失致死にしかならないんだよね。司法って不合理だなあ。
母親が広田レオナというのがええっ、って感じなんだけど(父親は団次朗って辺りがまた、この“愛情はあるけど苦労させてる”状況の説得力な感じ)、いかにも頭の悪い天然な感じが、有名な相手を好きになって、子供を産んでるのになんのフォローもしてもらえなくて、子供を施設に入れたあげくにアルコール依存症でその治療も娘の世話になっている、しかも娘の相手に金が入るはなししちゃってよけいな欲を出させるきっかけになる、という、なんの役にも立たない愛情の持ち主なんだけど、愛情だけはあったに違いない、と見えるところがやりきれないんだよね。ハルが女王様顔の加賀美早紀だからよけい、この不運としか言い様のない人生に対して、あくまでも愛情を持って幸福を願ってたんだろうなって思えるし。母親父親と身勝手な愛情を思いやることに慣れ過ぎて、秦(加藤虎之介)みたいなのにひっかかっちゃうんだろうなあ。
森田(黄川田将也)が外に出ているのが軽く衝撃であったが、役割としては普通の捜査でしかないけど、高城(沢村一樹)の表情を丹念に見せて、高城の焦りや憤りを共有することでその人物像に共感させる、うまい見せ方してるよなー。脚本も演出も寒竹ゆりって人なんだけど、佐々木希の「天使の恋」の監督か。
ハルを「バカだなあ」と思わせない描き方が、すごい見せ方として正しかったと思う。はなし自体は安いんだけど、描写力の勝利って感じ。