mother/#10「ひと目会いたい」

http://www.ntv.co.jp/mother/
脚本:坂元裕二 演出:水田伸生
ああやっぱこの番組って私には神! 綾野君出てくれてありがとう!
けっこうこの番組って、嘘予告やはったり予告多いんだけど、今週も鈴原家受難の様子は予告で想像したほど切実なもんでもなかった。むしろ「こんな甘いもんか?」というくらいに葉菜さん(田中裕子)とか釈放後の奈緒松雪泰子)の様子とか淡々としてたんだけど、それがドラマとしての温さに繋がらないのは、奈緒と継美(怜南@芦田愛菜)にとってもっとも不幸なのはどういうことかというのを番組がちゃんと描いているせいだと思う。
継美が奈緒を忘れて幸せに生きていくなら、奈緒はちゃんとそれを喜べるんだよな。自分の寂しさはあっても、司法の手で送られた施設の生活の平穏が冒されることはない。少なくとも、奈緒と引き裂かれるように別れるような、劇的なつらさを味わうことはないもの。
それでも継美がかつての自分のように奈緒を求めて他人と馴染めなかったり、奈緒を求めて泣いているとかなら、しょせん自分にはなにもできなくても、奈緒の心はずっと軽かったんだと思う。「自分はなにもしてやれなかった」という後悔で済むはなしならね。
なんていうか、ちゃんと優しい施設の人たちに見守られて同じような子供たちと仲良くしていても、奈緒といないことは継美にとって決定的な欠落なんだと思うんだ。そこが埋まらなければ永遠に幸せにはなれないっていうような。結局このふたりは引き裂かれたんだし、奈緒の不幸は、もう継美の幸福になにもできないってことなんだと思う。
藤吉(山本耕史)の行動って分かりにくいけど、奈緒のためには一番効率的に親切なんだと思うよ。藤吉にとっての奈緒って結局行動しちゃった自分だから、奈緒の行動に対して応援したい気持ちがあるのは本心でも、行動しなかった過去の自分に、「そんなことをしたら、自分も子供も結局不幸になるよ」と証明したい気持ちがあったんだと思う。自分の関わった子供はなにもできないまま死なせてしまったけど、現に継美は奈緒と離れても忘れて幸せに生きていける。そうすることができるなら、誘拐なんかしないで済ませる方がずっと良かったって。でも継美が欲しいのは虐待に怯えることのない生活じゃなくて奈緒なんだ。大きくなった自分の足に合う靴を買ってもらっても、継美は奈緒に買ってもらった小さくなった靴を荷物に入れて、もう一度一緒に暮らすことを夢見ている。それ以外に、継美が幸せだと思う状況ってないんだよね。
そして奈緒がもう一度それをしないようにと架せられた枷が執行猶予3年なわけですが。問題はむしろ、それをしても捕まらずに済むわけなんかないってことで、このふたりが幸せになることってできるんでしょうか。あ。捕まって仁美を道連れにしてくれた真人(綾野剛)はほんとごくろうさん。もう出番はないかも知れないけど、あなたの存在感の功績ははけして小さくないと思います。私はすごくやってくれて良かった役だと思っているし、綾野君にとってもやって良かった役だと思う。
ちなみにこの逃避行があったおかげで、奈緒が鈴原家の人たちにわだかまりがなくなったり、葉菜を許せたことは良かったと思うよ。