龍馬伝★健の以蔵。
感想の追記で良いようなはなしなんですが、追記の追記ってのもなんなのでw。
実際さー。昨日は見てて「これはないだろ」と思うところの多いはなしだったんだよね。龍馬の捜索方法の無茶さもさることながら、龍馬が以蔵を探すって大騒ぎしてる一方で、事実として勤王党の中でも人斬りをしていることで孤立していた以蔵を、自分らだって脱藩の身になって他人の心配どころじゃないだろう土佐藩士たちがどう思ってんのかってはなしだったしさ。以蔵のやってたのっていわば勤王党の汚れ仕事だから、事態がこうなれば切り捨てられて当然だし、おまえそれで良いって言って始めたんじゃん、ってはなしだったからね。*1
そこがほんと健の以蔵のバカなとこなんだけど、健の以蔵が犬じゃないっていうのは、健の以蔵の武市さんに対する行動っていうのはけっして犬のような無私の献身なんかじゃないと思うんだ。行動のそもそもは武市の憂いをなんとかしてあげたいって気持ちだったと思うけど、それ以降は褒めてもらうためにやってるんだよね。ある意味人斬りの罪深さも自覚した上で、「武市さんのためならなんちゃあかまわん。わしほど武市さんの役に立ちたいと思うちょる人間はおらんきに」というのが以蔵の態度。だから龍馬みたいな仲の良い人間に会えばそれを言いたくって仕方ないし、収二郎と一緒に武市に会いにいった時に「人斬りはしたくない」って言ったのも、ほんとに言いたいのは「人斬りが嫌だ」ってことじゃなく、「わしは先生のために、したくもない人斬りをしとったがです。なのにそのことを褒めてくれんがですか」ってことだと思う。武市さんが失敗したのは、以蔵が気持ち良く自己犠牲に酔っていられるような、感謝の意思表示を怠ったことだと思うよ。
ほんとこの点は勘違いしないで欲しいんだけど、私心の底から以蔵はバカだって思うけど、そもそもが分不相応な思い込みで勝手に土佐を背負っちゃうような武市さんの愚かさも好きだし、そんな愚かな人を好きになって、状況が変われば足を引っ張ることにしかならない（以蔵が捕まれば、武市が知らないことだったと言い抜けることは難しい）愚かで人倫に外れた行動を、なんだかんだ言いながらできてしまう以蔵のバカさが好きなんだよね。好きっていうか、この普通の自己保身とか道徳観とかあったらできないような行動を現にやっちゃった人の気持ちの理由を、このバカとしか言えないけど、そこまでバカになっちゃうくらい武市さんが好きだというにとどまらず、その好きだという気持ちに見返りがなければ嫌だ、という以蔵の子供っぽさにまで進めて組み立てた健の役づくりのセンスにブラボって思う。この感じって電王の良太郎見てた頃に似てて、ドラマとしてはいくらでもお涙頂戴な“可哀想”で片づけられちゃう行動の裏にある、他人に言っても分かんないようなエゴだとかこだわりの裏のきれいな言葉で片付けられない欲とかそういう感情を、持たずにいられない人の思いの切なさとかそういうのを、見せてしまう健が好きなんだ。
正直言って、以蔵のお芝居自体は言われるほどすごくないと思うよ。事実として26の男の在り様としてあれがありなのかっていうのはあるし、この後岡田以蔵の出てくるはなしで、健の以蔵を踏まえた以蔵が描かれるとも思えない。これはこの龍馬伝の関係性の中で、なんでだか一人だけ子供みたいな役者が以蔵を演じたからこその岡田以蔵なんだから。*2
でも現に龍馬伝の中でこの以蔵はほんといじらしく切なく見えるし、この存在感は健以外の誰にも描けないと思う。そういう以蔵像を作り上げた健の役づくりセンスの勝利っていうか、今現在の以蔵の描かれ方自体、健が勝ち取ったもんだって気もする。序盤の脚本とか演出が、今みたいな以蔵を考えてたと思えない節もあるし。
捕縛されちゃった今、後は拷問刑死ぐらいしかシーンはないけど、拷問されるのが見たくないとも逆に見たいとも思わない。毒饅頭も武市さんの三文字切腹もどうでも良い。
以蔵の殺陣とかも私そんなに見たいと思わないんだけど、身体能力としての演技力にそんな興味ないんだ。むしろ気になっちゃうから無駄に長くしないで、って思う。そういう意味で気になって我に返ることがない程度に、身体能力としての演技力が身に付いた最近は見てて楽だとは思うけどw。役者としての健はほんと好きだし、健を見る時にそれが佐藤健という役者の仕事だという意識はもちろんあるけど、番組を見ている時に思うのは役としてのその人で、拷問も刑死も三文字切腹も、問題にすべきは描写としてどうこうじゃなく、そのシーンはどんな気持ちを描くためのものかってことじゃん。
思うのはさ。こんなにも見ていたいと思えるほどに以蔵が良い役になって良かった、ってことだし、武市さんが南朋さんで良かったなあ、ってことです。DVD-BOX購入貯金しておこうw。
