最後の絆/沖縄 引き裂かれた兄弟〜鉄骨勤王隊と日系アメリカ兵の真実〜

全体にドラマというよりはドキュメンタリーっぽい番組で、人物に感情移入するって感じではなかったんだけど、描かれた事実の重さがちゃんと伝わるようなお芝居をみんながしていることがなんつーか喜ばしかった。この言葉変? でもそんな感じだったんだよ。
今でいう中学生とか高校生の役だったこともあって、気持ちとかすごいひたむきで、そういう幼さ故の思い込みの強さとか視野の狭さとか、だからこそ兄への気持ちに蓋をしなきゃみたいな使命感とか、そういう全てがちゃんと康治(佐藤健)のものとして伝わってきて、ちゃんと伝わるようなお芝居を健がしていることにほっとした。可哀想とかそういう言葉を思いつく余地もないくらい今の感覚で見たら無意味でしかないんだけど、でもこの人たちにしたら当たり前の答えなんだと見ていてちゃんと思ったからね。
学校で級友たちの鬼畜米英に唱和するところとか、実際の康治さんや盛勇さんの言葉が挟まれる分気持ちを語る台詞もなければほんとの思いを口にできる状況でもない東江家の人たちの気持ちを、表情を大きくとらえてちゃんと伝える見せ方とか、事実と役者の体だけで緊張感を保ってるとこが、なんかすげーとか思ったんだよ。
全然かっこ良くもきれいでもない、無様で無力な少年の意地とか、だけど断ち切れない思いの強さとか、そういうとるに足らないくらいちっぽけな諸々の、だからこその美しさを描こうと思ったら、佐藤健という役者の存在は無二のものになりつつあると思う。もちろん誰がやっても同じものになるわけはないんだけど、健がやるとひときわ違って見えるっつーか。
きっと指揮官もいない、食糧の補給もない、そんな状況でただ戦えと言われた言葉に従って戦い続ける少年たちとか、わざわざ語らないことでひとつひとつの意味の深さが胸に迫るような、地味だけど良い番組だった。良い番組で良かった。