永田杏奈as岬祐月

1話の感想で書いてますが、岬のキャラは最初ほんとに退いてたんですよ。「親の七光り」とか言っちゃうくらいスノッブで高圧的な物言いが、oreジャーナルの記者@龍騎を思い出させて。
他の作品とごっちゃにするのもイタイはなしですがあのさんざん報道倫理を疑わせたイタイ記者が先生の最後の恋の相手だったのはほんと納得いかなくて、「ほんとに平成ライダーはまともに女を描く気がないよなあ」と、冷めた目で見たくなる決定打となったキャラを連想させるキャラの存在は、かなり作品世界を安く見せたわけです。
でもああいう友達がヒーロー特撮見てるとも思えない年頃の女優さんに、1年間かなり注目される俳優陣と同じだけのモチを持てというのも厳しいのかなあと思わされる例は過去作にもあって、そこは半分あきらめモードというか安いものが高く見えるようになることはないだろうと失礼な予想を立てていたんですね。
その辺は米村脚本の特徴の一つである対人感情の描写の不安定さもあって、岬はずっと好きになれないキャラだったんだけど、杏奈さん自体はインタビューで加賀美を憎からず思ってる、みたいなつもりでやっている、みたいな発言を読むようになってから「意外と面白い人だな」と思うようになって。
いやだってね。あの年頃の女優さんが岬みたいな可愛げのないお局ポジションの役を振られたら、「気の強い女」以上の掘り下げをしないなんてよくあることですよ。
実際岬が加賀美を好いているという描写があるわけでもないんですが、放送された内容を見ても田所チーム内の加賀美の距離って、田所さんとより岬との方が近く見えたんです。直接の先輩だし、田所さんがあまり描写されてなかった事情はあっても、岬の「私の周りにいる男が甲斐性なしなのは嫌だ」というある種女のエゴ的なリアリティが見えたというかw。2クールに入る頃には脚本自体も、「身内意識があるからこそのきつさ」みたいな描写をするようになったし。
私にとって岬は、仕事はバリバリこなすけど、本人自覚ないだろうけど男に対する期待は大きいし、無意識に甘える部分もあるよね、みたいなキャラでした。それはそれでリアルで、可愛いなあ、と思えるキャラだったわけです。

だから擬態岬のエピの後、擬態岬を殺した剣が岬ラブのモードになった時はすごい複雑で、感想で何度も書いたけど、そもそも剣が好きになった「おねえさんの代わりになってあげる」なんて言った岬はどこにもいないんです。ちゃんとその人を見て始まったわけでもない恋がちゃんと人を描くはなしになるとも思えず、私はどんどんいじらしく人間らしく変化していく剣の気持ちをかなえてあげたい一方で、自分の好きなキャラ同士の恋ばながはじまりの時点で大きな穴を抱えている不快感で、結局はこのはなしも、平成ライダーお約束の予定調和な描かれ方しかしないんだろうな、と冷めた目でみていました。

もともと現実を見ていない剣だから存在しないミサキーヌに恋をしたのか、存在しないミサキーヌへの恋を描いた結果に「現実を見なさい」というエピソードがきたのか、どこまでが予定されたものなのか私には分かりません。でもあのエピソードまで岬にとっての剣が、好かれて迷惑とすら思わない、嘘で切り捨てて良い程度の存在だったのは確かだと思います。そんな岬が自分の言葉で劇的変化を遂げた剣に身を挺してかばわれたらそりゃ絆されちゃうよね、ってはなしではありますが。

岬が加賀美をひっぱたいたのは誰かを責めずにいられないといういわば甘えだと思うんです。俗にいう八つ当たりなんですが、今回のはなしで見せた岬の、加賀美や田所さんや天道に対するその距離感に応じた甘えや、誰にも本心を明かさずに心の中で岬にだけかなえられない願いを語る、という剣の抑えた表現だけではなしが成立したのは、ほんと役者さんたちの積み上げてきたものの賜だと思うんです。

中でも杏奈さんに対して、「あなたのおかげで剣の死亡エピが良いはなしになりました」と言いたい気持ちでいっぱいになったゆえのエントリ。
つーか、そこまで剣のファンだったわけでもないのになんなんでしょうねw。