私はすべてに復讐する−−三島の理由−−

三島の造反に関しては内面の描写がほとんどなかったこともあり、権力志向で片付けられても仕方ないし間違っているとも思わないんだけど、序盤からあらゆる役者萌えを封じられて他のシーンの倍以上のテンションで三島のシーンを見てきた人間としては(w)演じる弓削くんが陸への感情を中心に役づくりしていたこともあり、そこを外しては考えられないんですよ。
三島っていうのは基本的に、終始一貫陸以外の人間はすべて見下しているように演じられていて、だからこそ対等と認めた(=握手を考えた)間宮ワームはただものじゃないんだろうとか、天道とは別の意味でカブト世界の基準になっていたキャラだと思うんです。天道への憎悪を露にする場面も何度かあったけど(「お前の未来を壊してやったぞ」のシーンとか)マジになってる時点で気持ちで負けてるわけで、まーくんは天道が嫌いならなおさら、マジで怒っちゃいけなかったんですな。
最終的に彼は根岸についてグリラスワームにまでなるわけで、それは序盤から描かれてきたワームへの嫌悪感や侮蔑からすると矛盾した行動には見えるんですが、もともと彼のワームへの感情は人類への愛情から出たものではないので陸への報復手段を手に入れるためならワームになる位気にしないというだけでしょう。根岸登場後の三島は根岸や陸への不満を強く出した演技をしていて、それはやはり彼の裏切りの動機が唯一自分が畏れ敬ってきた陸の権威の失墜、ひいては彼を敬っていた過去の自分への怒りだからだと思うんですね。
過去における愛情に決着をつけるためには陸以上にならなければならない−−それはコメント欄で黒猫亭さんが指摘するような石ノ森的父殺しの構造でしょう。
他者への猜疑心を強く持つ人物と描写されてきた三島が根岸みたいなあからさまにうさんくさい人物を信用するわけもなく、自らワーム化なんてそうとうヤケにならないとやらないと思うんですよね。ワームへの嫌悪感はともかく、自分の知らないワームの特性で意識を乗っ取られちゃうとかそういうのがないとも限らんし。あそこはやっぱ陸への復讐のためなら自分はどうなっても良いって意味で、まーくんは兄貴とは別の意味で陸への愛情に殉じたともいえるでしょう。
……なんかガチな人ばっかのはなしやなーーーw。

ちょっぴり追記

黒猫亭さんのエントリでつっこみがあったんでちょっぴり追記。

まーくんに「味覚がない」というのはドラマの台詞としてのはったりで、敏樹さんの意図したものは拒食とか摂食障害だったんじゃないのかな。実際味覚がないからってサプリだけで済ませるのは無理だと思うし真面目に受け取る描写じゃないよね。マイクロダイエットとかあの辺ならともかく、サプリじゃお腹ふくれないしさ。<サプリ常食人間の実感として。
味覚がないというのが人間性の欠落の描写だったというのは同意だが、ストーリー全体とか弓削君の役づくりも含めて三島の食関係の描写の意味は「食べたくない」という意思表示、欠落というよりは拒否だったんじゃないかと。「人間的でない」というより「人間的で在りたくない」ってこと。よく知らないのでいい加減なこと言ってたらすまんのだが、いわゆる味覚障害の人でも食事はするだろ?

オレがそのように三島を視るのは、やはり執拗に最後まで描き通された味覚障害という個別性の故である。飯が美味いと感じられない人間が真に人を愛せるはずがない、おそらくこの物語の人物描写のロジックはそのようなものなのである。人と人の肯定的な繋がりを食に仮託して描こうとする意志は一貫していたのだと思う。

三島は陸がいれたお茶を飲むシーンもあるし(演出の意図は陸への服従の描写だったんだろうけど)、最終回のステーキも、画面からは「食べる」という行為に託した状況への怒りを感じた。そういう意味で私が三島の食関係の描写から感じたのは「欠落」というより「歪み」なので、更生の余地はあったんだと思う。ホッパーズは本来三島と矢車になるはずだったって情報からいっても、三島をどう使うかという構想はあまり伸ちゃんには明確になかったんじゃないのかな。三島と矢車じゃエリートと挫折組のコンビになっちゃうし(w)、それはかなり見たくないなあ、という点も含めて実際のドラマはかなりストーリーとしては好みだったと思うけど。拒食には自己破壊願望とか成長拒否(のわりには育ってるがw)の意味合いもあるし、三島の裏切りを歪んだ子供の父親殺しの物語と見るのが個人的には一番しっくりくるなあ、と。
その辺を重く見ちゃうのは人生の大半をサプリ食いまくって生きてきた自分自身のリアリティと照らし合わせて、ってことだから脳内補完と言われればそれまでだけど、私はそう見る、というだけです。

むしろそう見ると三島の造形ってすごく黒猫亭さんのいう555以前の“白倉ライダー”的で、それがラスボスになるってどういうこっちゃって気もするけど、個人的には三島のストーリーは、自立できない子供の暴走が天意で裁かれたって感じで、強さじゃそれに劣ってもラスボスは根岸って思うけどね。