宿命1969-2010/#5

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脚本:坂上かつえ 演出:茂山佳則
今週も文句なく面白かったー!
そしてその面白さは面白さとして、ほんと三奈(真野響子)にはむかつきますよ。結婚に反対だというならなぜ白井代議士(奥田瑛二)と崇(北村一輝)が親子だからだって言わないんだろう? 自分が父親だと思ってた人間の子じゃなかったらショックかも知れないけど、そもそも崇にとって戸籍上の実父って記憶もないほど小さい時になくなった存在感の薄い人で、親子関係は三奈との方が強かったんだから、ほんとは学生時代の恋人の子供で、今まで知らなかったけどそれが白井代議士なんだ、って言えば良いじゃん。今書いたらほんとたいしたはなしじゃないじゃんって気がしてきた。むしろ崇と尚子の気持ちが通う前の初期に言えば、感動の親子の名乗りと有川会と白井代議士の関係成立で済んだはなしだったんじゃないか?
大体この縁談を壊して次があると思うところが三奈の甘さで、総理に仲人頼んだ現職の有力代議士との縁談破談にしたら、崇は官僚で勤め上げられたら御の字くらいのもんだよね。総理と白井の影響力が完全になくなるまで政界進出なんかできるわけないもん。それこそ東大卒大蔵省のエリート官僚で国費留学の経験もありなら、並以上の仕事自体は簡単に手に入るだろうけど。
そういうこと考えずにこの縁談は壊したい、でも崇には政治家になって欲しいっていうこの三奈の思考回路がさー。さすがお嬢の気まぐれで学生運動やる間恋人にも本名は名乗らずに、拘置期間も名前も言わない完全黙秘で不起訴を勝ち取った人間だなあ、としか。大体学生時代の白井がけして学生運動に関わらないのは母親との約束があるからだってのは知ってたんだし、世の中を変えたいなら権力を手にすることだってのもその頃から言ってたんだから、今30年たったお互いが当時の面影ないのは当然でも、もっと若い時期に見かけた新人代議士が恋人と同じ名前だったりとかで気付かない? まあそんなの言ったらはなしがはじまんないんだけどw。
んで山瀬みたいな人間の言うことがろくでもないのは自明のことだと思うんだけど、ビデオテープが宣子(小池栄子)の手に渡ったのは崇にとって良いことだと思うけど、宣子があれをゆすりの種に使う気ならともかく、復讐の種にはならんと思うが……。うーん、なるのかなあ。まあ気持ちはともかく、白井代議士と崇ふたり分の政治への野心をないもんと考えることはそう簡単じゃないか。もういっそ事情話して手切れ金もらってさっぱりしたら良いのに。宣子は自分が愛されてたって前提で怒ってるけどもともとの崇にとって恋愛がたいしたもんじゃないのなんて本人知らなくても「そういう男っているよねー」で分かる範囲のことなんで、ある意味宣子も尚子(上原美佐)もおぼこ過ぎて笑えるわー。
んでそういうセンセーショナルな本筋の影に隠れてしまいそうな役者のみなさまですが、ほんとこのはなしの北村さんは良くって毎週楽しみ過ぎるよ。崇って天地人の景勝さんのにおいのする役なんだけど、今週ははなしの内容もあって崇の表面的な権力欲や自己実現欲求の基になる三奈への感情とかそれを体現することを選んでしまった自分自身へのジレンマとか、そうやって出会った尚子への気持ちとか全部分かってほんと良かった。尚子の上原美佐も今まで気にしたこともなかった人だけど、ほんと代議士の家に生まれて自分をそういう家の娘と認識して育ってきて、でも実際結婚するってなった相手の行動とか状況に出会って生まれる感情への直情的でないからこその自分の気持ちへの距離感とかすごい、なんというか愛しいっっっ。なんか血縁あろうと兄妹だろうと、このふたりが結ばれないことこそが不幸だと思わせる説得力があると思います。神様なんかどうだって良いじゃん。大事なのは自分の気持ちだよー。
透(細田よしひこ)のまっすぐだからこその崇と三奈の言ってることへの嫌悪感とか、優秀過ぎる兄を自分の文脈で解釈した時に生まれる安さに自分で怒っちゃう愛したいからこその偏狭さとかすごい分かったし、それを諭す父親(田中健)の過去の敗北への感情も含めた述懐とか、画面の作り方表情の捉え方の演出もすごい良かったし、そういう意味で、三奈の真野響子がもっと動機が身勝手さに見えないような演技をできないもんなのかなあ。
原作はそろそろ上巻を読み終わるところだけど、部分的な改変はすごいはなしを面白くしてるし、ほんとこのドラマが今期一押しだ。←だったら起きて見てろよw。