それでも、生きてゆく/最終話「光の方に向かって… 」

脚本:坂元裕二 演出:永山耕三
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んっとこれって、ハッピーエンド、だよなあ?
「だよなあ?」っていうのは、洋貴(瑛太)と双葉(満島ひかり)はお互いの気持ちを確かめて、家族同士も和解して、もっと分かりやすいハッピーエンドの形があって良いわけで、双葉が草間ファームに行くのをやめて洋貴のそばで生きたとして、それを五郎(小野武彦)が責めるなんて思えないし。だって真岐(佐藤江梨子)をああしたのは文哉(風間俊介)であって双葉じゃないんだからさ。
でもやっぱこれがハッピーエンドなのは、この一連のできごとである意味亜季を巡る物語にオチのついた洋貴たち深見家に対し、双葉たち三崎家側では真岐を巡る物語が始まったばかりなんだもんな。真岐のことを知った駿輔(時任三郎)が「15年かけても(亜季のことが)償いきれないのに、一生かけても償えるんだろうか」って言ってたけど、真岐を巡る草間家の物語をそのままに洋貴のそばでハッピーエンドを迎えることはやっぱ双葉にはできないんだと思う。このある意味馬鹿げた選択を大真面目にやってしまうのが双葉という人間なんだし、双葉が選んだ人生なんだよな。
冒頭の文哉を巡る瑛太と双葉のやりとりとか、墓地での両家族の和解とか、遊園地の二人のデートとか、なんつーか面白いとかなんとかより、ここまで見てきたこの人たちの物語を見守る気分で見てて(いや面白いんだけどw)、やっぱ洋貴が双葉を抱きしめるシーンで、すごいカタルシスがあるというか「ああ双葉良かったねっっ」って気分になったんだよね。それはたぶん双葉が言っていたように、そうしてもらうことが双葉の望みだったんだってことが分かるからだし、ある意味とっくにもっといろいろやってたってなんの不思議もないのに(洋貴がトラウマ抱えて女の子と付き合えない男じゃなかったら、もっとお手軽に傷を抱えた男女の関係とかになってたよなー、きっと)なにもないままきたこのふたりが、ようやくここまできたって瞬間だからだよな。
それでもその幸福な瞬間から身を翻して走り出すのが双葉だし、でもこの物語の結末が、お互いの近況を伝える二人のやり取りで終わっていくのが、「ああこれはハッピーエンドなんだ。この二人の幸福な結末なんだ」と思えたというか、この人たちはこうやってそれでも生きていくんだし、私が幸せになって欲しいと思えるような生き方をしていくんだろう、と思えたのがすげー良かった。
その感じって「Mother」(2010年)の最終回の奈緒松雪泰子)と継美(芦田愛菜)を見てた感じに似てて、なんかやっぱ、坂元裕二っていうのはずっと同じ物語を描いてるんだろうなって気がしたよ。ワンパっていうんじゃなく、最終的に語りたいことはひとつなんだろうな、というか、不幸なまま終わるはなしは書きたくないんだろうし、この人の思う幸せってこうなんだろうな、っていうような。
この前ふと「太陽と海の教室」(2008年)の感想を読み返してて、あのドラマで岡田君のやった役が“洋貴”だったことを思い出したんだけど、この人にとって自分の作品ってどういう位置づけなんだろうね? インタビューとかあるなら読んでみたい。
いずれにしてもほんと良いドラマだった。脚本も演出も演技も申し分ないし、なによりこのメンツを揃えた企画gj、って感じ。幸せな3か月でしたとお礼を言いたい。DVD-BOXは買います。たとえ見る暇がなくてもw。