なぜ明日夢はヒビキの弟子になろうとしなかったのか

「高寺が弟子入りの予定を変えたから」という視点ではなしに(笑。

明日夢の弟子入りが取り止めになったことで響鬼の展開が無理のあるものになり、明日夢パートと鬼パートが乖離した、というのはどういうポジションで響鬼を見ていたかに関わらず、多くの人の認めるところだと思います。
明日夢を弟子にしておけば、ちっとはましなはなしになっただろうに」*1という意味では、私も同感でございます。

ただリアリティという点に重きをおけば、高校すら自分の希望より親の意向を気にする明日夢みたいなやつ*2が、鬼の弟子になんぞなろうとしないだろ、というのは事実でありまして、でもそれは気にしなくて良いんじゃない?、と思うのは、ヒーローものに毎回出てくる少年がプチヒーローな役割を担うのは、赤影の時代からのお約束だから、ってはなしなんですね。

弟子入り取り止め後の響鬼は「明日夢は鬼になりたがるような子供じゃない」という描写に必要以上に筆を費やしたところがあり、そのせいで弟子入りにさらに暇を食った感があります。明日夢の描写と共に、「ヒビキは弟子を取るつもりはない」という描写を繰り返したせいでもありますが。
個人的には、ヒビキのような男と知り合ったからといって自分がヒーローになろうとはしないだろう、というのもリアリティなら、現に鬼という存在がいる世界に暮らしていれば、それを目指したいと思うのもリアリティだと思うんですけど。

明日夢の立場に立って「鬼になる」という気持ちを封印する要素になりそうな出来事として、山で迷ってあきらに「鍛えていないあなたがここにいるのは迷惑」と言われたエピソードがあります。気の弱い明日夢なら、「自分なんかが鬼になろうと思ってはいけないんだ」と思い込んでも無理はありません。
むしろ明日夢はあの出来事によって、「ヒビキの弟子になる」という気持ちを封印したのだと思います。盲腸の術後に直接ヒビキから「弟子にするつもりはない」と言われたことで、それを望むことによってヒビキとの関係を壊すことを恐れた、というのもあるでしょう。
もっとも術後のあのシーンは、煮え切らない性格の明日夢がわざわざあんなことをヒビキに聞くかなあ、という素朴な疑問を抱かせることといい、コンパスを見つめる明日夢、という意味不明なカットで締める本編といい、明日夢弟子入り路線を否定する、大人の事情で作られたシーン、って気がしちゃうんですけどね。
明日夢とヒビキさんのやり取り自体、お互いに相手の出方次第では、弟子入りもありそうなやらしい感じだったし。

明日夢の気持ちという点で考えるなら、やはり理由はあきらとの初対面エピだっただろうと思います。弟子入りをあきらに相談する辺りで、言及があれば良かったのに。

個人的には29話「輝く少年」のエピソードの中で土蜘蛛に再度襲われた明日夢が、己の弱さを自覚してヒビキの強さを目指し弟子入り、という線でまとめるのが前Pの後任スタッフへの思いやりだったと思うんですけどね。そうすれば30話以降は明日夢の修行と洋館の男女のたくらみに費やせて、鬼の修行や敵の正体といった、視聴者の興味も満足できたし、なんとかはなしを動かそうとする脚本家が、理不尽な非難を浴びることもなかったでしょうに。

*1:”ちっとはまし“という表現は、弟子入り取り止めで生まれた無理のある設定や、生かせなかったキャラに対するものです。

*2:しかしほんとに親のためだというのなら、受かるかどうか分からない高校より、確実に入れるところを狙うのが普通ですよね。実はもっちーやカツオみたいに、仲良い友達がそっち行くから、っていう方が自然。