カーネーション/〜第25週「奇跡」

脚本:渡辺えり 演出:松川博敬
渡辺あやの脚本のうまさが採り上げられることの多い番組だけど、実はこの番組演出が凄いんじゃないかなあ。つくづくそう思ったのがこの週終盤、末期ガン患者の吉沢加奈子(中村優子)がショーに出たいって気持ちを糸子(夏木マリ)に言うシーンね。
ガンになった自分を子供が怯えた目で見るのがつらい、可哀想じゃない自分の姿を子供に見せたい、と言うシーンで言葉に詰まって泣きながらそれを訴えるんだけど、その言葉を発するまで長い間があって、それは親しくはない人間に一大決心で頼み事をする人間の態度としてすごく真に迫ったものなんだけど、普通テレビサイズのドラマでキャリアのある女優さんが自分でこういう演技はしないと思うんだ。「思う存分すごいお芝居してください。あなたの見せ場です」ってお芝居だよなこれー。←心から褒めてる。
こんな感想書いてたら、どんな冷めた目で見てるんだと思われそうだけど、実際見てる時って完全に「朝ドラ見てるオバチャン」なんだよね。でも感想書こうと思ったら、あざといくらいに考えてある“ドラマとしてのできの良さ”にちょっと感心しちゃうのがこの番組である。
糸子とか娘たちとか、はっきし言ってメンタルはDQN以外のなにものでもないと思うんだよ。そこってモデルが存命中な時点で下手に修正もできない部分で、それを不快感のないドラマとして成立させるために、この番組ってすごく繊細に“できの良いドラマ”を目指してると思う。イタイけど善良な人間によって他人が救われるという特に晩年夏木マリ編のカーネーションって、下手したら釣りバカ日記とか寅さん辺りの人情ドラマなんじゃない? いやそれが悪いとは言わんけど。
加奈子が笑うショーのフィナーレでふつーにもらい泣きしたもん。「泣かせよう」って芝居に泣かされるんじゃなく、大変な運命を背負った人の必死の願いの成就に泣かされるのは、別にふつーのことだもんな。