天皇の料理番/第10〜11話

10話の篤蔵さん(佐藤健)は三十路に見えなかったけど、11話の篤蔵さんはちゃんと三十路に見えたよ。新太郎の年からいって三十路どころか四十路くらいだと思うけど、とりあえずちゃんと大人の男に見えたから問題無し。
俊子(黒木華)を語り手に、俊子がどれだけ篤蔵を思っているかを語り続けたようなこの番組で、俊子の消失を描く11話は今までどおりいくらも言葉にしないはなしだった。そもそもこの番組の登場人物はほとんどが多くを語らない人たちで、むしろ語られる言葉は序盤の篤蔵が口にする勢いまかせの減らず口みたいな、中身のない空虚なものであることが多かったからね。
それこそ身重の俊子に篤蔵が送ってた「ジュテーム」に、なんぼの真心があるかってはなしだよ。自分の子を宿した優しい妻になんの気持ちもなかったとは言わない。でも篤蔵が東京でコックの修行をできたこと自体、俊子が篤蔵を赦したからできたことだと思うし。篤蔵の出奔の経緯からいって、俊子の出方次第では秋山の家でももっと厳しく出ないわけにいかなくなったと思うんだよね。そうならずに済んだのは俊子がすごく篤蔵を愛していて、なのにその気持ちに見返りを求めない、篤蔵の背中を押すためなら自分を切り捨てることさえ赦してしまえるくらい良い子だったからで、篤蔵のジュテームなんか鼻で笑っちゃうくらいに、俊子の存在自体が「ジュテーム」だったと思うよ。
すごく良いのは篤蔵と俊子を演じる健と華ちゃんがまだ若くて、最後まで子供の恋のもどかしさを含んで見せたことだと思う。困った旦那だけど私はこの人のこと分かっている、こいつは俺のこと分かってる、って夫婦じゃなく、篤蔵の癇癪に本気で困って、うまく言えない自分に本気で落ち込む俊子と、癇癪を起こして声を荒げ、俊子を傷つけたと本気で落ち込む篤蔵っていうふうに。
だからこそ、俊子が遺した子供たちの優しさを見た時に、自分がどんなに愛されていたか心から理解できて、それが明日を生きる希望になったんだと思うんだ。
史実の徳蔵さんの奥さんが労咳でなくなってるってwikiで見たけど、俊子の病気が心不全で良かったと思う。最後まで、親子5人で語り合うことは出来たからね。そうやって新太郎(桐谷健太)が描いた家族の絵があって、俊子がちゃんと幸せだったと思えたのが良いよね。
来週が最終回だよねえ。良いドラマで良かったよ。